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大阪労働局労働基準部 窪田浩和安全課長  【平成24年06月25日掲載】

「安全の見える化」促進

危うい、現場での思い込み


 第85回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで「ルールを守る安全職場 みんなで目指すゼロ災害」をスローガンに展開される。昭和3年(1928年)に開催されて以来、「人命尊重」の基本理念の下、一度の中断もなく続けられている。大阪府における昨年の死亡者数は20人で、過去最少だった一昨年より2人増加し、業種別では依然としてトップを占めている。このため、大阪労働局では、建設業労働災害防止協会大阪府支部など関係団体と連携して、今年も「大阪危険ゼロ先取運動」を展開し、その中でも今年からの取り組みとして「安全の見える化」を推進するとしている。その活動の中心となる大阪労働局労働基準部安全課の窪田浩和課長に、重点項目や目標などを聞くとともに、取り組みを紹介する。
   (松木朋子)

■まずは昨年における大阪府内の労働災害の発生状況についてお聞かせ下さい。

窪田課長

昨年の全産業における死傷災害は8,350人と前年の8,459人に比べて109人減少しました。死亡災害につきましても58人で前年に比べて5人、7.9%の減少でした。これらの数字は、過去最少となった一昨年の数字を更に更新しており、こうした死傷災害や死亡災害の減少は、労働災害防止活動に日頃から熱心に取り組んでいただいている皆様の努力の大きな成果だと、非常に喜んでおります。しかし残念ながら、建設業での死傷災害は874人で前年より3人、0.3%の増加、死亡災害は20人で、過去最少だった昨年より2人の増加となってしまいました。

■やはり依然として業種別で建設業はトップを占めております。

窪田課長

先ほども申し上げましたが、建設業は、製造業と並んで死傷災害及び死亡災害とも増加しており、全産業に占める割合が一番多くなっています。死亡災害の発生原因は墜落・転落災害で12人と、全体の60%を占めていて、全産業から見ますと、57%で建設業がトップになっていますね。

■建設業における災害防止に対しての注意事項は。

窪田課長

建設現場には一歩間違えば重篤な災害を発生させる要因が多く、それぞれの現場で皆さん一生懸命安全活動をされていると思います。大阪労働局では周知啓発運動として「大阪危険ゼロ先取運動」を行っていますが、その中で今年からの取り組みとして「安全の見える化」の普及促進を提唱しています。例えば、安全帯のフック部に蛍光マーカー等を取り付け、目立たせることで使用をアピールして、安全帯の使用を促す効果が期待できますし、それは墜落・転落災害の防止に繋がっていきます。安全活動を見える化することによって、作業者の意識が高まるだけではなく、管理者からも安全な作業の遂行状況が明確になって、ひいては更なる取り組みの活性化に繋がるのではないでしょうか。

■大阪労働局の今年度の取り組み方針について。

窪田課長

「誰もが活き活きと安心して働ける元気な大阪」を全体のスローガンとして、「健康が確保される安全で安心な職場の実現」や「効率的かつ計画的な行政運営の推進」など五つの目標を定めています。労働基準行政の重点施策では、「労働災害の更なる減少を図るために」として、重篤な労働災害の発生を防止するための対策や、労働災害多発業種等に対する取り組みの推進、自主的な安全衛生活動の促進、大阪危険ゼロ先取運動の展開を実施します。

■その「大阪危険ゼロ先取運動」をはじめその他の取り組みは。

窪田課長

「大阪危険ゼロ先取運動」は今年十年の節目を迎えることもありますので、気持ちを新たに実施していきます。これを中心に、今年度の啓発事項で期間を定めた取り組みである「墜落・転落災害」「交通労働災害」「はさまれ・巻き込まれ災害」防止のためのパトロール等や「熱中症」の予防としてパンフレット等で集中的に周知、啓発実施しています。特にこれから熱中症への対策は、現場での強化も徹底して行っていただきたいですね。また、安全衛生に係るリスクアセスメントの普及など、それぞれの取り組みの普及・啓発を建災防をはじめ関係団体と連携して取り組んでまいります。

■最後に窪田課長のお考えになる災害防止対策があればお聞かせください。

窪田課長

そうですね。これはあくまでも私見ですが、災害発生の要因には、常識への思い込み・健康への思い込み・教育への思い込み・指示への思い込み・現場でのルール・マニュアルへの思い込みの五つの思い込みが含まれるのではないかと思います。その中で現場でのルール・マニュアルへの思い込みについてですが、文書で回覧や掲示をすれば決めたルール・マニュアルは必ず守ってくれるという思い込みです。見るという行為だけでは、意味を理解することなく流れていってしまうという危険性があります。昨年起こった東日本大震災での教訓として有名になった「釜石の奇跡」のように自ら危険を察知して自らの判断で避難できる子どもを育てるという指導が、命を守ることに通じる―。これは、災害防止にも同様に言えることだと思います。現場で管理者による安全指示が徹底され、作業員がルール・マニュアルをしっかり理解することが重要であると思います。

■本当にそうだと思います。これからも災害防止にご尽力下さい。



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