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UR都市機構西日本 森本 剛副支社長  【平成24年06月04日掲載】

初めての関西、新鮮な視線で

公共団体と連携し課題対応


 今年4月、独立行政法人都市再生機構西日本支社に赴任した森本剛副支社長。都市再生に係る土地区画整理事業をはじめ、ニュータウンや募集販売業務など、幅広い業務を手掛ける。「関西での勤務は初めて」とする森本副支社長に就任にあたっての抱負や事業の見通しについて聞いた。
    (渡辺真也)

「関西は、関西圏全体の活性化を皆さんが考えてらっしゃるのと、エリアごとに自分の所は何とかしたいという、この2つを一生懸命考えているという印象を強くうけました」。初めての関西勤務で感じたもので、関東にはない気質だと言う。この中で機構としていかに関わっていくか。

その1つとして大規模地震への備えを挙げる。リスク管理や防災対策など、首都機能を補完する関西の地域力や都市力をアップする必要があるとし「機構が有するノウハウや経験、人的資源、物的資産を最大限活用してそこで何ができるのか、とことん議論して機構としてお役に立ちたいと思っています」と語り、関西での経験がないからこそ「新鮮な視線で少しでも関西の活性化にお役に立てることがあるのではないかという思いで頑張るつもりです」と抱負を語った。

もう1つの役割では、機構最大のクライアントと位置付ける公共団体との連携を挙げる。地域における様々な課題に対応する各公共団体では、予算も人も不足し、自ら事業を実施することがなく、「我々をはじめ民間事業者やNPO、地元住民等外部の人たちの力をいかに発揮してもらうかが行政にとって必要で、そこで知恵をいかに絞るか、まさにそういうところを機構がお手伝いしていきたい」。

都市再生やまちづくり支援にあたっては、行政や民間では行き届かない部分を機構が支援することが組織的には決められている。しかし、その根っ子には地域特有の課題がある。このため「それを解決する方策がどうあるべきか、関係者の意向やスケジュール、リスクがあるかどうか、そういったことを洗い出す必要があり、そういった部分を今までの経験から提案し、公共団体や民間事業者の事業化を促進することがまちづくりの支援になるのだと思います」。

担当は、土地区画整理事業やまちづくり支援などだが、その業務は広範にわたる。エリア内の地域には、それぞれ異なった課題があり、それへの対応も重要だ。

「現在は、公共団体にも職員を派遣しておりますが、地域が抱える課題は基本的にはあまり変わらなくて、規模の大小の問題だと思います。公共団体の持つ意向やポテンシャル、地権者がどのような考えをもっているかなどを総合して、事業やまちづくりの提案をしていきたいと考えております」。

関西では、うめきた地区や吹田操車場跡地地区も担当する。うめきたに関しては、1期開発を起爆剤に、関西圏全体のポテンシャルをアップしたいということで、国際コンペの実施など「関西の頑張りを感じていた」と言う。1期の開発には機構も関わっているだけに2期についても「引き続き積極的に関わっていきたいと考えておりますが、開発にあたっては現在、大きな方向性が示されている段階で、今後具体的になってくれば機構の役割や出番が見えてくると思います」。

一方、従来の柱であったニュータウン開発では、中期目標で、平成25年度までには工事を、30年度までには販売を終えることとされている。このため現在では、計画に沿って事業が行われている。しかし、土地はまだ残っており、早く収束させるためには「魅力あるまちづくりが重要」だと考える。

このため、セールスにあたってはエネルギー循環や高齢者に対する医療や福祉等への対応、防災性の機能向上、まちを維持するための組織やいろんな人たちとのコラボレーションなど「サスティナブルな枠組みを作っていく必要があり、それには機構だけでなく民間事業者の力も借りて魅力あるまちを提案していきたい」。 

また新たな取り組みとして機構では、新郊外居住の提案を行っており、関西では神戸の舞多聞地区で既に実施されている。これは計画段階から居住希望者と機構が協働してまちづくりを行うもので、機構としては初の試み。

「入居前から隣の人の顔がわかり、入居後好評を得るなど新しいまちづくりのモデルになったと思います。単に土地を売るだけでなくそこにどんな魅力をつくるかが重要だと思います」。今後、人口が頭打ちする中、郊外での販売を伸ばしていくための大きなツールとして期待を寄せる。中期目標での事業は予定通りとしながら「あとは平成30年度の販売完了に向けてニュータウン部隊は全精力を注いでおります」。

最後に震災に関して東北の復興にも思いを巡らせる。URとしては今春、支援体制を70人から170人体制に拡充、災害復興住宅や市街地整備に本格的に取り組むこととしており「機構として応援していくことに責務を感じています。抱えている事業とバランスをとりながら支援をしていきたいと思います」。

入社以来、主に開発事業に携わってきた。思い出に残る仕事では、千葉県での工場跡地での商業施設誘致にあたり「関係機関の方々と協力し、予定期間に 誘致を完了することができ、評価を得たこと」を挙げる。また、まちづくりに携わって1番嬉しいのは、公共団体の担当者と思いを共有しながら、地権者との交渉をはじめ、 都市計画変更など「大きな山を乗越えた時のお互いに仕事の成果を共有できたときの充実感」とその喜びを振り返る。

仕事については、議論することでいろんな課題が見え、それを考えることが必要なこととし、「しっかり議論し、最善を尽くす」をモットーとする。 単身赴任生活では、「京都や奈良の日本を代表する歴史・文化を肌で感じたい」と休日はもっぱら名所・旧跡を巡る。

森本剛(もりもと・たけし)
 昭和54年4月、宅地開発公団、同63年8月、住宅・都市整備公団首都圏都市開発本部事業第2部事業計画第2課、平成5年5月、本社都市開発事業部事業管理課、同7年5月、千葉開発局事業部事業計画第1課、同11年10月、都市基盤整備公団本社都市整備部事業計画課、同13年6月、千葉地域支社都市整備部臨海事業課長、同16年7月、(独)都市再生機構本社ニュータウン業務部特定地区調整チームリーダー、同19年6月、千葉地域支社ニュータウン業務部長、同23年7月、首都圏ニュータウン本部副本部長を経て現職に。東京工業大学工学部土木工学科卒業。大分県出身。55歳。


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