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グランドデザイン(まちづくり)検討部会 部会長 小河保之副知事  【平成24年02月27日掲載】

4つのエリアの魅力を活用

民間からの提案求める雰囲気づくり


大阪都構想を掲げる橋下徹・大阪市長は、市長就任以来、その実現に向けた数々の取り組みを進めている。その手始めとして府と市の二重行政解消を目指し、大阪府と大阪市が連携するため昨年十二月に発足したのが、松井一郎知事を本部長に橋下市長が副本部長を務める「大阪府市統合本部」。同本部では、大阪の成長に向け、従来の制度や枠組みに捉われず「大阪全体の最適化」を図るため、利用者とストック活用の視点に立った「インフラ経営」と「まちづくりの方向性の共有」を目的に、大阪の都市構造を大胆に転換するため、府市共同によるグランドデザインの策定に向け取り組みを進めているほか、魅力ある都市の創造を目指した検討も進められている。

■グランドデザイン作成の目的や狙いを。

 現在点在している小さな拠点を単体ではなく、大阪全体の視点から捉えた方向性を出し、大阪を変えていく、変わっていくというメッセージを発信するもので、2050年を目標に将来イメージと当面実施していくべきことを取りまとめていくものです。

■検討範囲としては中央環状線の内側、インナーエリアをイメージしている。

 その中で国土軸の入口である「大阪・新大阪エリア」、南の玄関口としての「なんば・天王寺・あべのエリア」、東側の「大手前・森之宮エリア」、西側臨海部の「咲洲・夢洲エリア」の4つのエリアを設定し、それぞれが持つポテンシャルや魅力を活用する方向性を示していきます。これまでのまちづくりは、個々の拠点だけに目を向けていました。
 特に、大阪駅周辺と新大阪駅周辺など、それぞれ別のものとして捉えられておりましたが、それらを一つのエリアとして一体となって考えていこうとするものです。両地域の物理的・心理的な距離感をどう克服するかです。このエリアにある柴島浄水場を大阪市が廃止すれば、この土地の持つポテンシャルから、新たな活用方策も検討できるのでは思っています。

■柴島浄水場について橋下市長は廃止の意向を示しております。

 大阪市南部では、難波や天王寺、阿倍野で民間の開発事業が進められておりますがやはり単発でしかない。これらの地域の間には動物園や美術館など、それぞれに魅力のある施設がありますが、一つのエリアを形成する支障になっています。これを一つにするための仕掛けやアイデアを出していければ、難波や天王寺の個性を生かしながら、大きな魅力とポテンシャルを持ったエリアになると思います。
 また、森之宮エリアでは、現在ある資産やストックをどう生かすかです。かつての砲兵工廠跡地で、人が近寄らなかった場所に鉄道の検車場や下水処理場などの公共施設を持ってくることで活用してきたが、現在ではその資産・ストックを生かす段階にきています。それをどう展開していくか。まさにそこを我々が議論すべきことです。既にゴミ焼却施設がありますが、廃止も一案ですが、その施設を活用し、その地域ではゴミを外に出さず、焼却熱を利用するゼロエミッション地区にするなど、マイナスとされていた部分をプラスにするなど、いろんなところから提案を求めればいいと思います。
 さらに咲洲エリアについては、「関西イノベーション国際戦略総合特区」として開発していきますが、都心から遠いイメージがあり、JR夢咲線を延伸すれば梅田まで20分程度で行けます。現に大阪駅から直結するUSJには多くの人が集まってきています。ただ、もっと人を呼び込むにはインフラをさらに整備する必要があります。

■大阪市内の北と南を考えた場合、御堂筋のあり方が重要となってきます。

 将来、都市再生環状道路が完成し、新御堂筋とつながれば御堂筋から車両を締め出してもよいのではないか。自動車交通を御堂筋から外側に持っていき、緑でつなぐなど、制度も含めて検証する必要がある。御堂筋そのものの活用については、府市都市魅力戦略会議を中心に詰めてもらい、我々の作業としては将来的に必要なものと、直近に必要なものについてあくまで方向性を出すことで、個々のアイデアは民間から提案を求めればよく、行政が主導でやる必要はありません。要はエリアを動かすための仕組みを考えることです。

■実現に向けては。

 景気が低迷している現在、直ちに活用できるものではありませんが、民間からアイデアを募ったりするなどして雰囲気をつくることも大事だと思います。このため、是非とも建設業界にも積極的に提案してもらいたい。今あるストックを使おうとすると必ず仕事は出てきます。ストックが溜まり、それを活用するときにアイデアを出してもらえればと思います。

■広く民間からアイデア、提案を求めるための雰囲気づくりが必要であると。

 グランドデザインの大きな役割はそこにあります。インパクトのある施設づくりも必要でしょうが、やはり雰囲気をつくっていくことだと思います。私が最初に言ったのは需要者側の論理によるまちづくりであるということ。高度成長期には供給者側の論理でよかったわけですが、現在は同じやり方では通用しません。我々としては方向性を出し、熟度に見合った提案を求めることです。今あるストック、眠っている資産などをどう活用するか、当面として2〜3年先を見通した大きな方向性を打ち出し、その中で直ちに出来ることは実現していきたい。最終的には人を中心とした、歩きたくなる魅力あるまちにしたいと考えております。                                        (文責・渡辺真也)



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