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竹内脩・枚方市長   【平成24年01月05日掲載】

活力と賑わいの創出を目指して

新市民病院は北河内医療圏の核へ


行政と市民が一体となって、行政力と市民力を高め、「全国に誇れる自治力を備えたまち」を目指している枚方市。昨年9月に二期目の市長当選を果たし、第二ステージの「信頼・安心・改革」の市政を、さらに前進させている竹内脩市長に、市民病院の建て替え事業をはじめ、第二京阪道路開通後の効果や香里園駅東地区市街地再開発事業への期待、さらに計画されている総合文化施設の建設など、活力と賑わいの創出に向けた新たな顔となるまちづくりについて聞いてみた
                                       (聞き手・中山貴雄代表取締役)

  第二京阪沿道の開発も視野に

■まず、枚方市のまちづくりにおける特色からお聞きします。

竹内市長

枚方市は面積が約65平方キロメートルで、人口約41万人のまちです。市のまちづくりでは、すでに進めている事業と、次のステップに繋げていかなければならない事業があります。いま取り組みを進めているまちづくりの基幹事業は、枚方市民病院の建て替え事業です。現在の市民病院は、昭和40年代に建設された建物で、老朽化に加え、災害への対応や耐震性などの面で多くの課題を抱えています。しかしながら枚方市民病院は、北河内医療圏で唯一の公立病院でとして60年余りの間、市民の生命と健康を守るため、救急医療をはじめとする様々な医療を提供し続けてきました。加えて本市には民間病院や大学病院なども多くあり、充実した医療機関は枚方の大きな特色として、多くの市民から高い評価をいただいてきたところです。こうした環境をこれからも維持し、さらに充実していくことは、市民生活の安全・安心を支える上で、また未来を見据えたまちづくりを進めていく上で、極めて重要なことです。市民病院は、これからも公立病院としての役割をしっかり担い続けなければならないと考えています。

■公立病院としての機能と役割を果たすわけですね。新市民病院の概要を教えてください。

竹内市長

はい。平成21年に現在の市民病院の東側にある土地を国から約1万平方b取得しました。免震構造を採用した鉄筋コンクリート造地下1階地上7階建て、病床数は335床です。文化財の発掘調査も終わり、昨年11月には市立枚方市民病院改築工事として、新病院建築工事等の入札を行いました。平成26年秋の開院を目指して整備を進めたいと考えています。病床数は旧病院と変わりませんが、二次救急機能・災害時の対応機能に加えて、小児・周産期医療、質が高くて身体にやさしい医療、がん治療などの分野で特色がある公立病院として、市民のニーズに応えていきたいと思っています。具体的には小児・周産期医療の充実として「小児医療の充実と保健・福祉との連携」「365日・24時間対応の小児二次救急医療」「分娩・新生児集中治療部門の整備」、質が高く身体にやさしい医療の充実として「内視鏡外科センターの設立」、がん治療の充実として「最新の放射線治療の実施」「緩和ケア病棟の設置」などを進めます。そして新病院開院後に現病院を取り壊しますが、そこには新病院の駐車場を整備するとともに、次の課題として肢体不自由児通勤施設を移したいと考えています。また、休日や夜間に受診できる初期救急センターを整備し、このエリアを北河内における医療の核にしていきたいと考えています。

■話は変わりますが、第二京阪道路が平成22年3月20日開通しました。その効果はいかがですか。

竹内市長

第二京阪道路は他の幹線道路と並び市域道路ネットワークの軸となっています。また、開通により、国道一号の慢性的な交通渋滞を大幅に解消するなど、市域はもとより京阪神間の物流の円滑化や地域産業の活性化、安全で快適なまちづくりに大きく貢献していると思っています。そして第二京阪道路沿道のまちづくりを進めるための次のステップとして、枚方市と寝屋川市、交野市の隣接地、茄子作・高田地区には大きな発展の余地を残した市街化調整区域約40ヘクタールの農地があります。産業・商業地への土地利用転換など多様な利用の可能性が広がっていますが、残念ながらまだ地権者の間で一枚岩になり切れていません。その大きな要因は、地価の低下傾向だと思っています。これまでの土地区画整理事業や市街地再開発事業にしても、常に地価が右肩上がりに伸びることによって、地価の値打ちが上がっていました。キャピタル・ゲイン(資産価格の上昇による利益)でもって、工事費あるいは公共施設の整備費の一部を賄うというのがこれまでの仕組みでした。しかし、いまは地価が読み切れないという中で、地権者の間にも将来に対する不安があります。一方、市としては農業振興も大事ですし、都市開発を進めたいという思いもあります。しかし、あくまで地権者の合意がなければ開発できません。土地区画整理事業や都市再開発事業は、非常に難しい時代になりました。

■香里園東地区では、市街地再開発組合による三街区がオープンしました。期待も大きいと思います。

竹内市長

この再開発は、枚方市と寝屋川市の2市にまたがって開発されている全国でも初めてのケースです。昨年の3月には、香里園かほりまちの愛称で、ランドマークとなる鉄筋コンクリート造地下1階地上37階建ての超高層ビル「ザ・香里園タワー」が竣工しました。いま第一期工事が終わって、第二期の解体事業が進められています。第一期工事ではバスターミナルも完成しました。このバスターミナルは寝屋川市域ですが、バス利用者の七割以上は枚方市民であり、本市としても駅周辺の快適で安全な住環境の整備とともに、新たな賑わいが生まれることを期待しています。

  「総合文化施設」の建設も  地元からの要望高い連立事業

■総合文化施設の計画も打ち出しておられます。

竹内市長

枚方市には約1400席を設けた市民会館大ホールがあります。しかし、この施設も築後40年が経過しました。エレベーターがなく、扉が内扉と外扉の二重扉になっていません。トイレもほとんどが和式で、洋式にするにはスペースが狭いなど、バリアフリーや設備面で多くの課題があり、耐震性の面をみましても一日も早く総合文化施設の建設に着手しなければならないと思っています。私は単に市民会館大ホールを建て替えるのではなく、人口41万人の大きなまちにふさわしい枚方の文化の顔になるような施設にしたいと考えています。市内には50を超える市民コーラスや、絵画等のグループも150を数えています。美術ギャラリーは枚方市駅前のサンプラザ三号館と楠葉駅前のくずはモール内に二つあり、90%を超える稼働状況です。ただ、これらは貸しビル等のためにギャラリーとしては天井が低いという難点があります。市民の心が込められた絵画や工芸品などの作品をより良い環境で展示し、多くの方に鑑賞していただきたい。市民の頑張りが映えるような文化芸術の拠点という意味で総合という名前を付けています。

■駅前の近鉄百貨店が撤退される話も聞いています。その跡地の活用にも注目が集まりそうですね。

竹内市長

近鉄百貨店のビルは自社をメインとする共有ビルで、自社保有のまま新たな土地利用が計画されるのか、あるいは所有権も含めて第三者に譲渡されるのか、まだはっきりした話は聞いていません。市としてもできるだけ詳しい情報を一日も早くお願いしたいと思っています。楠葉は賑わいを回復しています。枚方市駅周辺も活気を取り戻し、総合文化会館を起爆剤に、まちの賑わいの創出を図っていかなくてはならないと思っています。

■ホテルの誘致は、どのように考えておられますか。

竹内市長

シティーホテルは淀川を挟んで阪急線側の高槻市、茨木市、吹田市にありますが、京阪本線側にあるのは守口市だけです。枚方もこれまでホテルの誘致はしてきました。しかし、ホテル事業の難しさもあるのでしょう。まだ、新たな進出には至っていません。何がネックになっているのか、それを明らかにした上で、克服する手だてを考えていかなくてはならないと思います。

■最後に京阪本線(寝屋川市・枚方市)連続立体交差事業の概要を教えてください。

竹内市長

この連立は地元からも強く要望されています。平成24年度の都市計画決定に向けて、これからは、環境影響評価に係る地元説明会に入る予定です。事業延長は約5.5キロメートルで、このうち枚方市域は約3.4キロメートルとなっています。対象駅は枚方公園駅、光善寺駅、香里園駅の三駅で、高架方式で21カ所の踏切を除却します。高架とともに環境測道を設けます。駅前広場などの整備事業については、牧野駅を平成23年度、長尾駅を平成25年度、津田駅は平成26年度の完成を目指して推進しています。また、市内経済の活性化の促進や災害時の広域的な運搬ルートを確保するために、新名神高速道路の整備促進も働きかけていきたいと考えています。市政運営は、市民からの信頼があってはじめて成り立つものです。引き続き、より幅広い市民との対話を深めながら、市民の願いが市政に反映できるよう公正・清潔・健全な市政運営を進めていく所存ですので、今後ともよろしくお願いします。

■大変お忙しい中、本日はありがとうございました。枚方市のさらなる発展を願っています。

(たけうち・おさむ)昭和47年3月京都大学法学部卒。同年4月大阪府庁入庁、平成4年4月生活文化部私学課長、7年5月総務部副理事兼財政課長、9年4月政策調整室長、11年4月大阪府教育委員会理事兼教育次長、13年4月大阪府教育長、19年5月大阪府中小企業信用保証協会理事長を経て、19年9月枚方市長就任(現在2期目)。大阪府出身、62歳。


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