日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
interview
大阪府都市整備部 村上 毅部長  【平成23年5月23日掲載】

維持管理重点の予防保全推進

避難告知など斬新な治水対策

ハイウエイオーソリティ構想


大阪府下でのインフラ整備を担う大阪府都市整備部では、東日本大震災を受け、被災地に職員を派遣する一方で、所管する構造物等の総点検を実施している。巨大災害の前には完全な備えなどはなく、災害対策は減災の視点に重きを置きながら「逃げる」ことも選択肢の一つとする。今年4月に就任した村上毅部長は、「西日本が元気になること」を念頭に、施設の適切な維持管理をはじめとした事業展開を図る。その村上部長に今年度事業の見通しや取り組みについて聞いた。

■就任に当たっての抱負から。

「まずは震災対応に関してですが、大阪府は和歌山県とともに岩手県へ職員を派遣しております。さらに西日本を活気づけるための仕事をつくっていくことも重要だと思っております。これを念頭に置いた上での事業執行に務めてまいります。抱負としては、昨年度に部として掲げた変革と挑戦のテーマの下、治水や河川、道路等の新たな基本方針を引き続き実施していきます。この中ではインフラマネジメントとして予防保全を含め、新たな整備計画と併せた10カ年計画を策定します」

■今年度の主な事業計画を。

「昨年度までは財政引き締めによりストップしていた事業が多くありましたが、今年度は維持管理を重点とした予防保全を進めていかなければならないということで、財政構造改革プランの中で位置付けていただきました。震災の影響が出てくるかもしれませんが予定では3カ年計画で約百億円を増額して予防保全と通常の維持管理事業を実施します。また10カ年の建設事業である府県間道路や鉄道の連立事業などの広域建設事業についてもきっちりと対応していきます」

事業の重点化にあたっては、二〜三年で完成するような事業、投資効果の高い事業の絞り込みを今年度に行ない、従来の整備計画と維持計画を併せて インフラマネジメントとして打ち出していくとした。

■昨年度は河川整備に関して治水手法の転換が図られました。

「新たな治水手法として、従来の全ての住民の安全を確保するという手法から大きく舵を切りました。個々の河川についてシミュレーションによる治水計画をたて、住民に対しては危険箇所やリスクを説明しながら対策を実施する手法と、都市計画による対策と危険を予知すれば逃げるといった避難告知などの手法で、かつてない斬新な治水対策となります」

河川整備では槇尾川ダムが知事判断で中止となったが、必要な河川対策は実施する必要があることから今後も地元に対して説明を続けていくこととし、 安威川ダムについては計画通りダム建設を予定しながら、ダムの計画規模について今後、河川整備委員会で検討を進めていくとした。

「このほか、みどりの風を感じる大阪事業は、沿線住民や企業と一緒になってオール大阪で道路に緑を増やしていこうとする取り組みで、東大阪市の308号線では海風や山風の通る道があり、そのルートを利用して緑を増やしていこうと。既に金融機関が事業に因んだサービスを実施するなどおもしろい取り組みになってきています」

さらに、従来型の公共事業にはない取り組みとしてハイウエイオーソリティ構想を挙げる。

「現在の高速道路会社が別々に設定している料金体系を、使い手の視点に立ったものとするため一元的に管理するものです。実現には法令改正などが必要ですが、それも含めた制度設計を国に対して提案しています」。

これは阪神港の一開港化などのポートオーソリティ構想と同様に、これまでのように国へ要望するのではなく、提案や提言することで従来の制度等の変革を求めていくもので、府をはじめ大阪市や関係府県、経済団体とともに活動を展開している。

■昨年度からは笑働OSASKAの取り組みも始まりました。

「10年程前から実施している府民との協働によるアドプトを笑働OSAKAとして再スタートしたものです。汚いとかマナーが悪いといわれた大阪の街を良くしようとする取り組みで、単に美化活動だけでなく地域コミュニティの再生や防災力の向上に向けた取り組みを実施しております。それぞれに関わる団体や機関、また企業のCSR活動とも連携し、これら様々な方々による異業種連携により活動の幅を広げていきます」

この中で府としての役割は、それぞれの団体等への呼びかけとする。統一ロゴマークによる府民運動として、また賑わいづくりにも生かすため若い人たちにもアピールしていきたいとし

「このため職員一人ひとりの意識改革も大事で、それぞれの担当部門の中だけでなく横との連携、つながりを持った取り組みを進めいきたい」

と意欲をみせる。

■東日本大震災への支援状況は。

「当初は物資の仕分けに関して他部局と連携して二班体制で派遣しました。その後、下水道調査を三班体制で派遣しました。関西広域連合の中で府と和歌山県は岩手県の担当となっており、今後は災害査定に関して岩手県から支援要請がきており、今後派遣してまいります。」

府では、阪神大震災後に四つの活断層の長周期の波形をつくり、それに基づいた耐震設計を実施しているが

「被害を完全に防げるものではなく、やはり減災の視点で取り組まなければならないと思っております」。特に津波対策に関しては、想定外の高さになると「もはや危機管理の問題」

でいかに早く避難するかがポイントだとする。

 現在、防災計画の策定とともに、既存構造物等の点検を実施中、特に重点道路一四路線の耐震強化や道路・鉄道の高架部などで補強を行なっているほか、河川や港湾の護岸の耐震化も進めている。
 阪神淡路の復興支援で豊中市に出向した折に誘われて始めた山登りが趣味とする村上部長。それ以降、日本アルプスをはじめ年に一〜二回の山行きを楽しんでいる。職員に対しては「自らが主体的に動くこと」を要望したと言う。「鉄の団結」の伝統を誇る都市整備部の新たな推進役として期待がかかる。
(渡辺真也)

村上毅(むらかみ・たけし)昭和54年4月大阪府採用、土木部土木監理課、岸和田土木事務所、同60年4月都市整備局交通政策課、同63年6月企画調整部企画室主査(関西高速鉄道梶j、平成3年5月土木部道路課主査、同5年4月都市整備局都市整備課区画整理係長、同7年6月土木監理課主幹(豊中市都市整備部参事)、同11年5月枚方土木事務所建設課長、同12年6月土木部道路課参事、同13年4月総務部財政課参事、同14年4月土木部河川室河川環境課長、同16年4月交通道路室道路整備課長、同17年4月鳳土木事務所長、同19年4月都市整備部交通道路室長、同21年4月同部技監を経て、現職に。京都大学大学院工学部工学科修了。大阪府出身。57歳。


Copyright (C) 2000−2010 NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。