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interview
大阪府都市整備部 井上 章部長  【平成23年1月24日掲載】

維持管理、予防保全に重点

事業効果を見極め投資


行財政改革を進める大阪府では、施策の立案や事業執行にあたっては「選択と集中」が求められており、社会資本整備においても例外ではない。しかしながら、社会経済活動や日常生活を支える上でインフラ整備は不可欠なものであり、それらの後退は許されない。大阪府のインフラ整備を担う都市整備部では、従来から手法や計画の見直しを行いながら、ストックを活用した基盤整備に努めている。「今後は維持管理にシフトしていく」とする井上章部長に、これまでの取り組みや今後の見通しについて聞いた。      (渡辺真也)

■まずは昨年の事業に関してから。

井上部長

 「昨年の事業では、3月には鳥飼大橋や第二京阪道路、その後、なわてや竜華の水みらいセンターが供用を開始し、年度末に向けてもいくつかの施設が供用を開始するなど、予定通りに進めてきました。部長マニフェストに掲げました大阪の魅力づくり、戦略的な維持管理、都市基盤整備の見直し、新しい治水の考え方、都市計画道路の見直し方針などについても、手を付け始めたものもありますが、ほぼ予定通りに進捗しています」
 「また、都市計画のマスタープランについても大阪市内を除き二月の都市計画審議会での審議を予定しております。知事重点施策であるみどりの風を感じる大阪事業では、みどりの風促進区域の制度創設に向け順調に動いており、府民協働に関してもアドプトが10周年を迎え、笑顔をコンセプトにした笑働大阪を新たなキャッチフレーズに各種のイベントを展開、笑顔あふれる明るい大阪を目指しております」

■入札でのダンピング対策なども打ち出されております。

井上部長

 「入札契約制度に関しては、予定価格の事後公表や最低制限価格等の見直しを行い、特に予定価格の事後公表では11月から適用範囲を拡大しております。また、最低制限価格と低入札価格調査基準価格については来年度から改正します」

■各土木事務所の地域支援課の状況は。

井上部長

 「二年目になりますが地域安全センターの設立を目指して、警察とも連携しスタッフも充実してきました。地域によって温度差はありますが、既に数箇所で設立され、民間住宅の耐震化啓発活動もおこなわれており、地域差はありますが少しずつ定着しつつあると思っております」
 「この取り組みは地域との協働であり、名称通り主体は地域住民の方々で、住民の活動をどのように支えるかとの視点で動いております。地域によっては熟度の高いエリアとそうでないエリアがあり、どうしても進み具合が違ってきます。我々としては、意識の薄いエリアでどのようにアピールしていくかを考えております。課題としては、行政と住民の役割の線引きが難しいことです」

■来年度事業についてですが、予算規模的には厳しいものが予想され、事業全般についても維持管理が中心となる。

井上部長

 「維持管理にシフトしていくことは、財政構造改革プランの中でも維持管理の充実ということで位置付けられております。建設事業費が縮小されていく中では、今あるストックをしっかりと使っていくことで、既存の施設が使えなくなると意味がなくなりますから、そこはしっかりと進めていきます。予防保全の考え方で、橋梁や河川、公園施設も含めて、こまめに点検と補修を行い、傷が大きくなる前に手当てを行って寿命を延ばしていく。例えば橋梁の場合、架け替えの時期が一時期に重ならないよう平準化に努めていきます」

■河川整備では、従来の整備計画の見直しが行われ、その中では槇尾川や安威川でのダム整備に注目が集まりました。

井上部長

 「槇尾川ダムについては知事の指示により見直しが行われました。河川整備委員会で審議された結果、ダム案と河川改修案の両案が提示されたわけですが、今後は地元の意見を聞き、手順を踏まえた上で知事が判断されるもので、我々としては知事の判断をサポートしていくことになります」
 「安威川ダムについても河川整備委員会で審議することとなっておりますが、議論が後回しとなっております。知事もダムが妥当との意向を示されており、我々もダムの方向で動いておりますが、利水計画の見直しによりダムサイトの高さをどうするかの手続きを委員会の方でしっかりと議論していただくことが、まず必要となります」

■ハイウェイオーソリティ構想について。

井上部長

 「最終的には法改正が必要で、実現に向けては非常にハードルが高いものとなっておりますが、時間をかけてやっていきます。 構想の最終目的は、運営主体を一本化しようとするものですが、その前に、運営主体がばらばらでも現行制度の中で実現が可能な分かりやすい料金体系に改正していこうと 取り組みを進めています」

■高速道路もそうですが、港湾にしても、あるものを有効に活用するという観点ならば一元化すればいいという考え方も出てきております。

井上部長

 「これまでの社会資本整備は、造り手側の制度があって、それぞれの事業主体が整備を行ってきました。エンドユーザーである国民から見れば、 事業主体がどこであろうと関係ありません。国民の共有財産として一体となって効率的に使用できれば、それでいいわけですから。そういった観点から、 道路ではハイウエイオーソリティ構想、港湾では阪神港が出てきたものです」

■まさにストックの活用ですね。

井上部長

「従来のインフラ整備は景気浮揚対策としての側面が強い部分もありフロー効果で見る場合が多いものでした。しかしストックで見れば不十分なところも あります。ストックとして何が足らないか、どこが不足しているのか。ミッシングリンクのようにそこがつながらないことによってストック効果が発揮されていない ところはないかなどを見極める必要があります。財政状況の厳しい中では、その辺を見極めながら投資をしていくことが求められますね」



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