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日本維新の会  馬場伸幸代表  【2023年01月05日掲載】

経済成長につなげる大阪・関西万博に

ライフサイエンス、観光など活かす


 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)まで約2年3ヶ月。成功に向けた機運醸成の動きが高まるとともに「一過性のイベントにしてはならない」という声も多くあがる。ポスト大阪・関西万博を見据えた取組みなどについて、日本維新の会・馬場伸幸代表(衆議院議員)に聞いた。

   「最先端の医療都市・大阪」世界に発信 

■大阪・関西万博まであと2年3ヶ月ほどになりました。

 前回の大阪万博開催が1970年、昭和45年ですね。その当時に現役で働いていた建設業者さんからは「あの頃は本当に儲かって仕方なかった。民間の仕事で手一杯で、価格の安い公共工事は断っていた」という話を聞きます。もちろん、建設業界だけではなく、万博効果に加えて高度成長の波にも乗り、大阪ではあらゆる業界が活況を呈していました。 
 千里丘陵の万博会場では、ワイヤレステレホンやリニアモーターカー、電気自動車など未来社会を見据えた先端技術が披露され、当時としては万博史上最大の来場者数を達成するなど、大成功に終わりました。

■大阪が憧れの対象でもあった時代です。

 まさにその通りです。しかしながら、万博のレガシーを成長・飛躍に活かすという観点が当時は完全に抜け落ちていた。これは本当に反省すべき点です。結局、前回の万博終了後から大阪経済の長期停滞が始まった。一時的に実体のないバブルはあったものの、企業の本社機能が流出し、それに伴って人材も奪われ、税収も落ち込み、ずっと悪循環が続いてきたといえます。

■悪循環を断ち切るためにも、今回の万博には期待したいところです。

 当初は「本当に万博を誘致できるのか」と不安視する向きも多かった。というのも、2008年のオリンピック招致に大阪市が名乗りをあげたものの、結果は大惨敗。数千億円かけてつくった夢洲も負の遺産となった。万博に立候補してもどうせダメだろう。そんな雰囲気でした。しかし、そこは逆転の発想で、塩漬けになった夢洲を活かし、何としても誘致を成功させるぞと。マイナスをプラスにすべく挑んだわけです。国会においては、二階俊博衆院議員に会長就任をお願いして万博誘致のための超党派の議員連盟をつくり、全国的な機運醸成や各国への支援要請に取り組みました。事務総長は河村建夫衆院議員(当時)、事務局長は竹本直一衆院議員(同)にそれぞれ就いていただき、私は幹事長を務めました。

■かなり重厚な布陣ですね。現在の万博議連の活動については。

 開催決定以降はコロナの影響などもあり休眠状態でした。だが、まだまだ機運醸成が図れておらず、二階議員からも「万博は国家プロジェクト。大阪だけではなく国全体で盛り上げていこう」とおっしゃっていただいたことから、万博を成功させるための議連に衣替えし再スタートしました。政治的に支援することでお役に立ちたい。

■ポスト万博も気になります。

   東京と同じ土俵でなく

 大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げ、長寿や健康をテーマにしています。今回こそは一過性のイベントとせず、会場で展示されるライフサイエンスなど最先端の技術を実装・産業化して経済成長につなげなければならない。例えば、大阪が強みを持つ健康・医療技術、そして観光です。2029年の秋から冬頃にはIRの開業が予定されています。IRはまさにインバウンドの玄関口となりますから、医療と観光を組み合わせたメディカルツーリズムといったものも成長の可能性があります。東京と同じ土俵で戦ってはいけない。

■観光資源として医療を活かす。

 大阪市の大手前地区では大阪国際がんセンターと大阪重粒子センター、大手前病院の3施設が近接して連携が強化され、がん診療の一大拠点が形成されました。また、2024年春には中之島にiPS細胞を活用した再生医療など最先端医療の提供と産業化をめざす「未来医療国際拠点」が整備されます。集中的に研究に取り組むことでiPS細胞の早期実用化も夢ではなくなります。さらに大阪大学と大阪公立大学を中心に日本における最先端の医療を構築する動きもある。政治および行政の役割はこのような流れをサポートすることです。医療都市・大阪を世界に発信し、「大阪に行けば安心して最先端の治療が受けられる」。世界中の人たちにそう思ってもらいたい。そのスタートとなるのが今回の万博です。現在、特区における外国人医師の参画など外国人患者を受け入れるための様々な規制改革の議論が行われています。

   副首都確立へ リニア・北陸新幹線の早期全線開業めざす

■インフラ整備についてはどうお考えですか。

 昨年の関西3空港懇談会では、関西空港の年間の発着回数を現在の23万回から30万回に引き上げ、ハブ空港を目指すことが確認されました。発着枠の拡大実現に向けて万博やIRなど成長戦略を強力に推進していきます。加えて神戸空港の国際化も合意しました。関空の需要があふれることがあれば、補完的に神戸空港を活用する。伊丹は国内線のハブと位置づける。すなわち、3空港一体で価値を上げていきます。 
 道路については、大阪湾岸線西伸部や淀川左岸線など高速道路網の整備が着々と進められており、ゆくゆくは紀淡海峡ルート実現への期待も高まります。私がまだ政治家秘書の時代ですから、約40年前には既に構想は持ち上がっていましたが、現在は事実上凍結されています。これが実現すれば、瀬戸内海を含めて関西がループ化され、例えば、兵庫と和歌山がぐんと近くなる。いずれにせよ、インフラ整備は首都圏に比べて関西は非常に遅れています。経済成長を支えるためには、もっとスピード感をもって取り組まないといけない。
 関西2府4県の自治体にはそれぞれ大きな特色があります。ごく簡単に言うと、大阪は商都、兵庫はおしゃれなまち、京都と奈良は文化・歴史のまち、和歌山は自然と温泉に恵まれたリゾートのまちといったところでしょうか。関西一円を結ぶ陸・海・空のネットワークを構築すれば、関西一体で発展するポテンシャルはとても高いとみています。

■リニア中央新幹線と北陸新幹線の大阪までの早期全線開業についてはいかがですか。

 リニアに関しては、当初計画においては東京〜名古屋間の開業目標を2027年とし、大阪までの全線開業は2045年と設定されていました。大阪は18年も待たされる。そこで、私は衆院予算委員会(2015年)で安倍晋三総理(当時)に「東京〜名古屋間だけで採算が取れる。それだけの需要がリニアにはあるのか」と質問しました。実際、東海道新幹線の利用者については東京〜新大阪間が圧倒的に多い。そして、リニア中央新幹線全線同時開業推進協議会の当時のアンケート調査によれば、東京〜新大阪間の新幹線利用者の大半は「名古屋開業になってもメリットがないのでリニアを使わない。従来通り『のぞみ』を使う」という結果でした。その理由は、東京〜名古屋間と表現されていますが、正しくは東京の起点駅は品川駅です。従って東京や新大阪からリニアに乗る場合、品川や名古屋で乗り換えなければいけない。これは非常に不便だと。乗り換え時間を考慮するとあまりメリットがなく、これでは国民の足にならない。だから一日も早く名古屋〜新大阪間を全線開業すべきだと安倍総理に訴え、同時に最大の課題であったJR東海のファイナンスについても提案を行いました。すると委員会終了後に安倍総理が私のところに駆け寄ってこられ、「馬場さんの言う通りだ。ちょっと知恵を絞らせるよ」と返事をいただいた。ほどなく最大8年の前倒しが決まりました。

■なるほど。そんな経緯があったのですね。

 次に北陸新幹線ですが、もともと北陸は関西とのつながりは強かった。私の地元である堺市でも、石川県や福井県出身で銭湯や眼鏡店を経営されている方が多い。だが、今や北陸との交流人口は首都圏が関西を上回ってしまった。これを取り戻すには1日も早く敦賀〜新大阪間を着工し、早期全線開業を実現させることが不可欠です。またそうなると、従来の山陽・東海道新幹線に加え、リニア、北陸新幹線という広域交通の一大ハブ拠点が形成され、副首都・大阪に相応しい都市機能を有することができます。

■それでは地元の堺市についてお聞かせください。

   南部地域のリーダーに 

 大阪というのはやはり北高南低。大和川以南は置き去りにされてきたという思いがある。だからこそ、南大阪の玄関口である堺の活性化にもっと力を入れ、南部地域のリーダー役を担えるようにしないといけない。永藤英機市長は若いし、能力もある。真剣に堺のことを考えている。堺市には7つの行政区があり、それぞれの特長を活かしたまちづくりに時限を設定した目標を掲げて取り組んでいるところです。一例を挙げると、南区は「医療と学問のまち」。南区の泉北ニュータウン地域には2025年に近畿大学医学部・近大病院が開設される予定です。それで近畿大学にけん引役になっていただき、堺市全域で病院や診療所とネットワークをつくり、医療のDX化を推進します。学問については区内に中学・高校がたくさんあるので連携を深めて価値を高めたい。
 堺市は旧石器時代から現代まで歴史がつながっている全国的にも非常にユニークな自治体です。2019年には仁徳天皇陵古墳も世界遺産に登録されました。最先端の都市を目指しながらも、歴史・伝統文化・観光を武器に地域おこしを図ることが重要です。

   建設業 適正価格で産業として活力を

■ところで、昨年の堺市議会で低落札率と市内建設業者の売上高営業利益率の相関を大阪維新の議員の方が指摘し、堺市に業者の声をもっと聞くように促していました。ちょっと驚きました。

 維新が誤解されている部分もある。「身を切る改革」というフレーズを「公務員はもとより、市民のみなさんも身を切ってくれ」と間違って解釈されている方も依然多い。われわれが進めている改革は、税金で生活させていただいている政治家が率先して身を切ること。議員定数を減らし、報酬もこんなにたくさんいらない。それにより公務員のみなさんに本気になってもらう。また行政組織に関しては、例えば、国では新たな課題に対応するために「こども家庭庁」や「デジタル庁」といった省庁を創設する。そのこと自体は否定しませんが、スクラップ&ビルドの発想が欠けている。何故、濡れ雑巾を絞る話ができないのか。それがわれわれ維新の会の大きなテーマです。大阪府市ではそれを成し遂げた。この取り組みを全国に広げていこうと思っています。
 一方で、事業や商売を営んでいる方々には、ちゃんと儲けてもらわないといけない。経済を活性化させずしていったい何が政治なのか。

■低入札が続けば建設業全体も疲弊します。

 もともと建設業というのはまちづくりに協力していただいている産業であり、裾野も広く、雇用面での貢献も大きい。ありきたりの言い方になりますが、やはり適正価格で仕事をしてもらい、産業として活性化してほしい。経済活性化につながらなければ公共事業の意味がない。

■おっしゃる通りです。最後に一言お願いします。

 私は昭和40年生まれですが、小さい頃は大人も子供も夢や希望があり、世の中はこれからどんどん良くなるはずだと。昭和40年代にはそんなワクワクドキドキ感がありました。だから個人的には、みなさんが心躍るものを具現化していくことが本来の政治家の仕事だと考えています。リーダーシップを発揮し、夢や希望を実現するためのプロジェクトに取り組み、ヒト・モノ・カネを呼び込むまちづくりを行う。結果、建設業も含めたあらゆる業界がかつての活気を取り戻す。建設業に関連したところでは、デベロッパーが意欲的に大阪で事業に乗り出せる環境整備が必要です。
 2008年に橋下徹さんが知事に就任した時、大阪は文字通り泥沼状態でした。それから15年を経て、ようやく大阪全体がきれいな土地に変わりつつあり、ここ最近はずっと成長に向けた種を撒き続けています。次は水をやり、肥料を与え、この先の10年でさらに大阪を良くしていきたいですね。

 
 


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