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(株)竹中工務店 執行役員大阪本店長 弦田康平氏  【2022年05月19日掲載】

最良の作品を最良のスピードで

「感動を創る」など4つの意識改革


 現在の手持ち工事に加え、今後、仕事量の増加が予想される中では、設計人員や施工における作業員の高齢化等による人員の逼迫、さらに建設資材をはじめとする物価上昇、資材搬入の遅れ等による工期への影響等が懸念されるとしながら、「これまでの活動基盤を軸ぶれさせることなく、柔軟な思考でスピーディーに成果につなげることが肝要だと考えている」と就任にあたっての抱負を語る。

 企業経営の観点からは、「社員が心身ともに健康であるエンゲージメントが重要」とし、個々の社員が最大限にパフォーマンスを発揮できるような環境づくりやチームワークを形成することで、「生産性向上につなげていきたい」と、それら環境づくりに努めるとする。

 事業の運営方針に関しては、 “明日の「建築」と「まち」を創るリーディングカンパニー” を理念とする大阪本店のビジョンを継承しながら、その実現に向けて、作業所や各部門を含めた「現場で価値を創る」、「感動を創る感性を磨く」、1人1人が「意味のある仕事」をし、「自分の幸せからみんなの幸せを創る」―の4つの意識改革が必要とし、これを踏まえた取組みを進める。

 これらの取組みにより、「最良の作品を最良のスピードで提供することでお客様のニーズを迅速に具現化していきたい」とし、このため社員に対しては、1人1人のパフォーマンスを最大限に発揮し、チームワーク良く生産性を上げていくことを求め、さらに、安全安心で品質の良い建物を提供するため、「協力会との絆を深めていきたい」とする。

 大阪本店では、近畿圏と四国エリアを統括するが、これらを含めた全国におけるシェアはこれまで4割程度で推移している。今後は、京都ではコロナ禍で止まっていたホテル等の案件が動き出す気配があるとし、神戸では都心部の再整備事業の本格化など、それぞれの分野における事業展開に期待を寄せる。

 また、万博やIRは全国的にも注目されていることから、「大阪に本社を置く当社としても注目している」。特に万博を見据えて、お客様側も、「住宅も含め集客力を意識しており、市場として増加するのでは」との見通しを述べながらも、物価上昇の影響等により「先が読めない部分」があるため、「お客様に対し最良の作品を最良のスピードで提供するため、各種提案を働きかけていきたい」と意欲を示す。

 一方、働き方改革等への取組に関しては、エンゲージメントを第一にしながら、「労働時間短縮への取組みを推進していく」とし、既に時間外労働については取組みを始めており、課題として、「自身も含めて時間に対する意識改革が必要」とし、退社時間の厳守はもとより会議や打合せ等も就業時間内での実施を奨励している。

 また、作業所ではBIMをはじめとするDXの導入を進めており、現在では協力会社にも浸透しつつあるとするほか、「可能な限りでのアウトソーシングや書類の簡素化等に取り組んでいる」とした。さらに生産性向上については、現場作業の自動化やロボット化も、「加速しつつある」とし、適用可能な作業箇所についての研究開発も推進していくとしている。

 このほか、建設MaaSの取組みでは、本店のある本町から大阪市域の目的地への移動について、オンデマンド移動と搬送に関する実証実験を実施。これにより得られた知見等を、国のスーパーシティの指定を受けた夢洲へ適用し、万博工事や関連工事等での活用も検討している。

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 思い出に残る仕事では、若手時代に神戸ハーバーランドの工事で逆打ち工法を経験したことを挙げる。また、作業所長時代には、かつて付き合いのあった協力会社や職長達と再会し、「一緒に仕事ができたこと」を懐かしむ。

 趣味は、自社物件の見回り時に、周辺の博物館や史料館等に立ち寄ったことをきっかけに、各地の名物や名産を楽しむための一人旅。モットーは、常に明るく強い意志を持ち、時には謙虚に省みながら、感謝を相手に伝えることから、「明るく、強く、そして謙虚に、ありがとう」を心がけている。

 弦田康平(つるた・こうへい)昭和62年3月東京都市大学工学部建築学科卒、同年4月竹中工務店入社、平成16年4月大阪本店作業所工事課長、同25年4月大阪本店作業所部長、同年5月大阪本店作業所長、同29年3月神戸支店長、 令和3年3月大阪本店副本店長を経て、同4年3月より執行役員大阪本店長に。東京生まれの横浜育ち。58歳。

 


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