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大阪労働局労働基準部 堀幸男安全課長  【2021年06月28日掲載】

「持続可能な安全管理未来へつなぐ安全職場」

死亡災害撲滅に向けた取組みを推進


労働災害防止推進計画の目標達成へ

「リスクアセスメント」が大きな効果 


 第94回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで、厚生労働省大阪労働局らの主唱、建設業労働災害防止協会大阪府支部らの協賛を得て、「持続可能な安全管理 未来へつなぐ安全職場」をスローガンに展開する。昭和3年に実施されて以来、「人命尊重」を基本理念に、一度も中断することなく続けられている。
 令和2年における大阪府内の建設業における死傷者数については、令和元年に比べ15・3%減少したが、依然、業種別では建設業の死亡災害の割合は高く、未だに墜落・転落が最も多い事故の型となっている。
 墜落・転落災害の防止に向け、大阪労働局では「リスクゼロ¢蜊辮юi運動」の一つ、「命綱GO活動」をいっそう推進し、「2丁掛けフルハーネス型墜落制止用器具の使用促進」などを強く呼びかける。これら災害防止活動の中心的な役割を担う大阪労働局労働基準部安全課の堀幸男課長に安全行政の取組みなどについて聞いた。

■まずは令和2年における大阪府内の労働災害発生状況について教えてください。

 令和2年における大阪府内の労働災害発生状況ですが、休業4日以上の死傷者数は、前年と比べて80人減少し、8,726人となりました。
 死亡者数も48人と、前年より5人減少しております。全国においては、死傷者数が131,156人と5,545人増加している中で、多少なりとも減少したことについては、素直に喜びたいと思っております。
 さらに、建設業における死亡者数は12人と、令和元年に比べ8人減少しており、特に、墜落災害が9件減少したことは、建設業の死亡者数の減少に大きく寄与したところです。また、死傷者数についても677人と令和元年より122人減少し、15・3%の減少となっております。
 しかしながら、死亡災害については、依然として建設業が業種別では最も多く、全体の25・0%を占める状況です。
 また、令和2年に、大幅に減少した墜落・転落災害ですが、死亡災害12人のうち4人が墜落・転落災害であり、未だに33・3%を占め、死亡災害の中で最も多い事故の型となっております。その発生状況を見てみますと、「屋根の補修工事中に、踏み抜いたもの」や「要求性能墜落制止器具を着用しながら使用していなかったもの」などであり、基本的な墜落防止措置の設置や要求性能墜落制止器具の使用により防止できたものがほとんどです。
 また、令和2年においては、足場の倒壊及びクレーンや車両系建設機械の転倒など重大災害につながる可能性のある事案が発生しております。これらを防止するためには、労働安全衛生法等の法令の遵守はもちろんのこと、基本的な作業手順を行い、必要な安全措置を確実に講じる等の手を抜かない安全管理を行っていただければと考えています。
 労働災害防止には、危険性又は有害性の特定、リスクの見積り、リスク低減措置の検討等を行い、その結果に基づく措置を実施する「リスクアセスメント」が大変効果があると考えています。

■全国からみた大阪の状況についてはいかがですか。

 全国の令和2年の労働災害による死亡者数は802人で、令和元年の845人に比べ43人減少し、過去最少となりました。
 大阪府においても48件と一昨年53人から5人減少しております。
 死亡者数が多い業種は、全国では建設業が258人で最も多く、次いで、製造業が136人、陸上貨物運送事業が87人となっています。大阪府においても、建設業12人、製造業9人、陸上貨物運送事業8人となっております。
 建設業での死亡災害は、全国では元年に比べ11人・12・9%減少し、大阪では12人と前年に比べ8人・40%減少しました。
 建設業の死亡災害の内、墜落災害の占める割合については、全国では36・8%の110人です。大阪では33・3%の4人となっており、以前は大阪の特徴として墜落・転落の割合が高かったのですが、令和2年においては、全国水準まで減少しております。

■今年度の大阪労働局の目標と重点事項について具体的にお聞かせください。

 今年度も、平成30年度を初年度とする「大阪労働局第13次労働災害防止推進計画」の死傷災害を平成29年と比べ、令和4年には5%以上減の7,927人以下に、死亡災害を15%減の51人以下とする目標を達成するため、さらに強力に施策を展開していかなくてはならないと考えております。
 先ほど申し上げたように、令和2年は死亡災害、死傷災害とも前年より減少し、死亡災害については全産業で54人以下とする目標は達成しましたが、死傷災害については全産業で8,092人以下とする目標には全く届いておりません。
 建設業につきましては、死亡災害は令和元年よりも減少はしておりますが、未だに死亡災害全体の25%を占めており、そのうち墜落・転落が33・3%を占めております。
 できる限り多くの建設現場のパトロールを実施し、年末にも、近畿ブロック各労働局と連携し、一斉に建設現場に対し現場指導を実施することとしています。
 さらに、今後増加が見込まれる高年齢労働者について「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の周知徹底と同様に増加が見込まれる外国人労働者の労働災害防止のため、危険体感教育や現場送り出し教育等の安全衛生教育の徹底を図っていきたいと考えております。

  「命綱GO活動」を強力に推進、2丁掛けフルハーネスの使用促す

  「STOP!熱中症」職場での死亡者ゼロ目指す

■それでは建設業における取組み及び注意事項については。

 今年の大阪府内の建設業における労働災害による死亡者数は、5月末日時点で3人と、昨年の同時期より2人減少しておりますが、死傷災害については、5月末時点で274人と64人(30・5%)の増加となっております。特にその他の建設工事で107人と44人増加しており、69・8%増加しております。
 13次防の目標達成のためには、平成30年度から展開している「リスクゼロ¢蜊辮юi運動」の中の活動のひとつである「命綱GO活動」をさらに推進し、この墜落・転落災害を防止する必要があります。
 「命綱GO活動」では、墜落制止用器具のフックの掛け替え時の墜落防止や、万が一墜落しても墜落時の衝撃の緩和を図る、2丁掛けフルハーネス型墜落制止用器具の使用の促進を進めています。
 皆様方にも、この活動の趣旨を御理解いただき、積極的に墜落災害防止への取組みをお願いいたします。
 7月1日から実施される令和3年度全国安全週間におきましても、「持続可能な安全管理 未来へつなぐ安全職場」のスローガンの下、実施要項に基づき、建設業における労働災害防止対策について、「足場等からの墜落防止対策の実施、手すり先行工法の積極的な採用、フルハーネス型墜落制止用器具の積極的な導入と適切な使用」や「適切な安全衛生経費の確保」等の実施を提唱しております。
 また、期間中ユーチューブにて動画による局長メッセージや建設業に携わる方々へのメッセージを投稿し、広く労働災害防止を呼び掛けております。
 今年も熱中症の予防対策が必要な季節になりました。昨年は、大阪府内の職場での熱中症による休業4日以上の死傷者数は49人となっており、死亡者も1人発生しています。昨年に引き続き、今年も5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、予防対策に取り組んでいます。
 同時に、職場における熱中症による死亡者ゼロを目指し、異常を認めたときにはすぐに救急車を呼ぶなどの対応を行っていただくと共に、労働者が「体調が悪いです」と同僚や上司などに伝えやすい職場・現場環境の実現をお願いいたします。

■最後に一言お願いします。

 今年は4月7日に新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が宣言され、同宣言が6月20日まで再延長されたことから、大変ご苦労をされている現場も多いことだと思います。また、変異株の流行により、今まで以上に感染防止対策に苦慮されていることだと思います。
 色々とご苦労されているとは思いますが、労働災害の防止だけでなく、長時間労働の抑制や週休2日制の導入等の働き方改革に積極的に取り組んでいただきたいと考えています。



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