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大阪府建団連 山本正憲会長  【2021年06月28日掲載】

課題解決には一体的取組み

将来的にはシンクタンク設立も視野


 大阪府建団連の会長とともに、今年度から建設産業専門団体近畿地区連合会会長にも就任した山本正憲会長。働き方改革や建設キャリアアップシステム、担い手確保まで専門工事業界が直面する課題は山積する中、これら課題に対しては、「発注者と元請、専門工事業も含めた一体的な取組みが必要」と語る。その山本会長に、建団連会長就任からの一年間を通して見えてきた課題や思い、今後の事業展開等を聞いた。

■建団連会長に就任され1年間が経過しましたが、まずはこの1年を振り返って。

 会長就任前に職務権限代行として引き継ぎましたが、まず感じたことは、北浦年一前会長の大変さがよく分かったということです。北浦氏は、近畿建専連の会長でもあり、毎年、建団連と近畿建専連加盟各団体の新年互礼会はじめ、様々な行事には欠かさず出席するなど精力的に動かれていました。
 活動の中で一番の功績は、国に対して専門工事業を認知してもらったことにあります。かつて国土交通省ではゼネコンと専門工事業の所管が違っていましたが、その垣根を取り払っていただき、専門工事業の地位を高め、認知してもらいました。特に、大阪にあって専門工事業で本省に意見を述べることができたのは北浦氏だけでした。
 私の場合、事業主としての仕事と元請協力会会長としての役割もあったことから、会長としては行き届かなかった部分はありましたが、副会長はじめいろんな人達の助けを借りて、この1年間「何とかやってこれた」と思っています。

■今年度の活動については。

 基本的にはこれまでの事業を継承していきます。事業の核となるのは近畿地方整備局との意見交換会と高野山での慰霊法要、技フェスタになりますが、今年度は中断していた大阪建設業協会との意見交換を再開します。数十年前から中断していたもので、再開のきっかけは、一昨年の建団連の新年互礼会でご来賓として出席されていた大阪建設業協会の蔦田守弘会長にご挨拶した際に、私の方から再開をお願いしたことからです。
 これらの活動にあたっては各組合からの支援と協力が必要です。このため建団連の役割としては、意見交換会や互礼会、技フェスタ、法要等に取り組んでいく中で、会員組合や各業種が発展するための道筋を付けることだと思っており、それには近畿地方整備局や大阪建設業協会との意見交換が特に重要になるだろうと考えています。

■近畿建専連の会長にも就任されました。

 近畿建専連は全国建専連の地区組織とはいえ、全国建専連と違い法人格を持たない任意団体ですが、建団連の役割と重なるところもありますので、建団連の役割との兼ね合いをどうするのかという部分もあります。
 ただ、一つ言えることは、どちらも組織として仲間をつくり発信力を強化する必要があるということです。一つの組合や団体、業者の活動では限界があり、仲間を多く集めて組織として発信力を高めていく必要はあります。いずれにしろ建団連の活動は建専連と連携しながらやっていくことになります。

■技能労働者の確保と育成に関し、建団連としての取組みは。

 技能労働者の育成については、建設業振興基金の「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム事業地域連携ネットワーク構築支援事業」を建団連として受託し、加盟組合の新入社員を対象とした施工管理基礎コースと左官基礎コースや中堅社員研修を実施してきました。昨年度の事業終了後は建団連の独自事業として引き継いで実施しています。また、昨年度までは同じく振興基金の建設労働者育成支援事業をサポートしてきました。
 しかしながら、入職者の確保に関してはなかなか成果が上がっていないのが現状です。私も自社の求人活動を通して感じたことは、新卒の高校生の場合は給与より休暇で、年間で100日以上の休暇がなければ見向きもしない。また、中途採用では、給与や休暇の処遇面はもとより地元志向が強いように感じています。
 その一方で、職人の考え方も変化してきた。これまでのように親方や先輩職人の技術を盗んで腕を磨き、自らの才覚で判断して稼いでいたような業態ではなくなってきています。

■なるほど。

 また、働き方改革により、現場の4週8閉所に向けた取組みが進められる中で、職人を月給制にした場合、生産性の向上はどうなるのかという問題があります。有識者の中には、ユニオンを結成するか月給制にしないと人は集まらないとする意見もありますが、請負である専門工事業で、週休2日として月給制にした場合の生産性向上はどうすればいいのか。月給制にすればかえって仕事をしなくなるのではないかとの懸念があります。
 専門工事業者は元請と請負契約で仕事をしており、休暇や固定給に係るコストは請求できず、月給制にすれば会社自体の経営が圧迫される恐れも出てくる。また別の問題として、社会保険加入や建設キャリアアップシステムへの取組みが求められる中では一人親方が増えるだけではと考えます。
 最近では、保険加入を逃れるため一人親方を偽装する事業者も出てきており、これについては国交省からも注意を促されている。いずれにしろこれらの課題解決には、発注者と元請も含めた取組みが必要であり、専門工事業の意見を発信する上でも、先程言ったように発注者や元請との意見交換は重要となってくると思っています。

■今後、建団連として取り組む新たな考えはありますか。

 我々、専門工事業は国民の生命と財産守るインフラ整備を担っているという自負があり、業界がなくなることもないと思っている。近年は自然災害が頻発しており、その時に動くのは我々です。勿論、自衛隊や警察、消防も出動しますが、先陣を切るのは専門工事業はじめとする建設業者です。このため、それらの役割をより認知してもらうため、一般の方々に周知する広報活動にも力を入れていきたいと考えています。
 また、将来的にはシンクタンクが設立できればと思っている。韓国へ視察に行ったおり、元請と専門工事業者が、それぞれシンクタンクを有していることに驚きました。シンクタンクには学者等も参加しており、公の場で元請と議論を交わしていた。
 特に専門工事業のシンクタンクには2万社近い業者が加盟しており、個々の力は小さくとも数を揃えればそれなりの力を持てる。そうなると例えば工事でトラブルが発生した場合でも、専門工事業者側が一方的に泣き寝入りすることがない。一つの理想ではありますが、そういった取組みも視野に入れながら専門工事業全体の地位も高めていければと思っています。

■ありがとうございました。



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