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繁本 護衆議院議員(京都2区)  【2021年04月26日掲載】

京都モデルで取組む防災・減災

「予防伐採」「雨庭」を提案、予算化


 近年の自然災害の激甚化・頻発化により、自治体においてもハードとソフトを組み合わせた防災・減災対策がこれまで以上に強く求められる中、京都においては、平成30年台風第21号などでの被害を教訓に「予防伐採」や「雨庭整備」など独自の取組みが進められている。
 自民党・繁本護衆院議員(京都2区)はこれら「京都モデル」の防災・減災への取組みを加速させるべく、現場の視点から地域の実情を国に訴えるとともに、国土交通省での経験を活かした具体的な提案を行い、成果をあげている。繁本議員にこれまでの活動などを聞いた。

■繁本議員は国交省の港湾事務所長(室蘭、釧路)での経験を活かし、現場主義で災害対策に奔走されている印象があります。

 私は4年前の秋の衆院選挙で初当選させてもらいましたが、投票日に大型台風が近畿に最接近し、激しい雨の中で当選確実の報告を受けたことを覚えています。そして翌年、それを超える規模の大型台風が京都を直撃しました。平成30年台風第21号です。京都市内では、特に左京区北部の山間地域における風倒木被害が甚大で、人工林のスギやヒノキが倒れ、道路や鉄道、電線、光ファイバーといったライフラインが寸断され、山間地域の集落はまさに陸の孤島と化しました。
 発災直後、私はいち早く現地に駆け付け、被害の全体像をつかんだうえで、京都市や関西電力と緊密に連絡を取ると同時に、隣接する中部電力と北陸電力にも応援を求めました。まずはポンプ用の発電機を設置し、飲料水の供給をすぐに再開させて、次に電力会社3社の協働を促し、電柱・電線の復旧作業を迅速化するとともに、停電が長期に及ぶ地域には移動電源車の導入を提案、電気の利用を早めました。

■この災害での教訓から、予防伐採に対して国が財政支援を行う新しい補助制度を提案されました。

 地球温暖化に伴い、今後も大型台風の発生が想定されますが、現地ではこの3月にようやく倒木の処理を終えたところです。同じ規模の台風が来たら、また風倒木によりライフラインが寸断されてしまう。これは分かりきったことです。そこで私は、台風の翌年の衆院予算委員会(農林水産分科会)において「ライフラインに沿った立木で危険な箇所はどこかということを、あらかじめ地域で十分に話し合ってもらい、そのうえで予防伐採することが不可欠であり、政府として何とか予算をつけられないものか」と質問しました。それにより森林環境整備事業の中で制度化され予算がつき、このほど、第1号となるプロジェクトが二ノ瀬(左京区鞍馬町)でスタートしました。今後も予防伐採を力強く推し進めていきます。
 一方、都市部においても豪雨による浸水被害が相次いでいます。たとえば京都御苑です。京都御苑には多くの人が訪れますが、それにより地表面が踏み固められ、雨が降ってもなかなか地中に浸透していきません。透水係数が下がっているわけです。そのため豪雨時には京都御苑にたまった水があふれ、南側に位置する丸太町通りで冠水被害が起こっています。

■最近の甚大な水災害の頻発を受け、国ではあらゆる関係者が協働して行う持続可能な治水対策「流域治水」の施策を推進しています。 

 流域治水に関しては、京都市では雨水貯留機能を高めるため、京都の造園技術力を活かした日本庭園に雨水貯留機能を持たせた「雨庭」の整備に取り組んでいます。雨庭とは地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく一旦貯留し、時間をかけて地中に浸透させる構造を持った植栽空間のことです。この雨庭は小規模なものであることから、学校や病院、マンション、道路の植栽帯などあらゆるところに設置可能ですし、小規模で分散型の雨庭を市内に数多く整備することで、豪雨時に雨水が一気に河川や下水道に流れ込むことを防ぐことができます。一方、浸水被害を防ぐと同時に、雨水の地下浸透も促されるわけですから、健全な水循環も取り戻すこともできます。

■雨庭の普及に向け、国会でも提案するなど積極的に活動されていますね。

 現在、京都市にチームをつくってもらって、「都市型の浸水被害が市内のどこで発生しているか」「その中で雨庭をつくる条件が整った場所はどこにあるのか」さらには、「つくった雨庭を大切に維持管理できるコミュニティの力があるところはどこか」と。この3つの地図を重ねて、雨庭をどこ配置するか具体的に検討してもらっています。
 またこれまでは、京都造園建設業協会の協力を得ながら、京都市が単独の予算で雨庭の整備を進めていましたが、一昨年末の国会の環境委員会で取り上げ、小泉進次郎環境大臣にその重要性を訴え、国土交通省にも働きかけました。その結果、予算化することができ、加えて内閣官房に雨庭整備の取組みを省庁横断で進めるチームもできました。令和2年度から京都市では、国の補助を受けながら雨庭整備を着実に進めています。今後は公共、民間問わずこの動きを加速させるため、雨庭の認定基準をつくり、国としてその基準を満たしているところにはインセンティブを付与するなど政策的にどんどん応援していくことが必要だと政府に提案しています。もっと面的に整備して流域治水をさらに推進していきたい。

国際観光都市に相応しい街路樹整備へ 地元職人の技術活かす

担い手確保・育成 キャリアアップシステムで製造業並みの処遇実現を

■なるほど。京都モデルとして全国展開も期待できる。

 さらにもう一つ、京都特有の造園技術を活かした取組として風圧軽減型景観剪定(すかし剪定)というものがあります。これは美しい樹形を維持しながら、風圧を受け流して風害を防止する剪定技術です。よく風水害とひとくくりにされますが、風害と水害はきっちり分けるべきです。これからは風害対策にもしっかり取組まないといけない。たとえば、3年前の台風では北区の加茂街道などで街路樹がバタバタ倒れて通行止めとなり、町中の交通に大きな乱れが生じました。次は神社・仏閣など重要文化財が倒木被害を受けるかもしれません。国際観光都市の京都市だからこそ、災害に強く、景観への配慮も行き届いた街路樹整備を進めなければなりません。もちろん、剪定の歩掛りを引き上げることも必要です。今はあまりにも低すぎる。

■最後に、建設業の担い手の確保・育成、中でも技能者についてはどう考えておられますか。

 私の父親は一人親方のペンキ職人でしたので、職人問題には強い思い入れがあります。やはり、職人のみなさんが安心して働ける仕組みが必要です。国が推進する建設キャリアアップシステムを活用しながら、休日を確保して社会保険加入を促進し、製造業並みの処遇を実現しないと若い人は呼び込めない。そして何より大事なことは、予算をちゃんと積み上げ、地元の建設業が事業継続できる仕事量を確保することです。今年度からは国土強靭化のフェーズ2が始まりました。やらなくてはいけない公共事業はまだまだあります。

 繁本護(しげもと・まもる)
 平成3年姫路西高等学校卒業、同7年神戸大学工学部土木工学科卒業、同9年神戸大学大学院建設学修了、同9年運輸省(現国土交通省)入省、同15年イリノイ工科大学経営大学院(MBA)修了、同18年国交省北海道開発局室蘭港湾事務所長、同19年同釧路港湾事務所長、同20年釧路市港湾空港部長、同22年国交省港湾局国際調整官。衆院議員秘書を経て同29年衆院議員(自民党京都2区=左京区・東山区・山科区)。兵庫県姫路市出身、48歳。



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