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大阪府住宅まちづくり部 藤本秀司部長  【2021年02月08日掲載】

2つのグランドデザイン統合へ

大阪広域ベイエリアまちづくり推進

「密集市街地整備」新たな取組み


 魅力ある都市空間の創出や良質な公営住宅の供給、密集市街地解消など、安全で安心な都市居住の実現に向けて各種施策を展開する大阪府住宅まちづくり部。今年度は、部としてもコロナ対応を支援しながら事業推進に努めている。今後は、新たな大阪のまちづくりを描く、「2つのグランドデザインを統合したビジョンを策定する」とする藤本秀司部長に、来年度事業の見通しについて語ってもらった。

■まずは昨年を振り返っての感想から。

 コロナで始まりコロナで暮れた1年でした。コロナ関連では、部の職員のうちこれまで延べ2千人以上が関連部局のサポートにあたり、大阪コロナ重症センターの整備にも建築系職員を派遣するなど、全庁挙げてコロナ対応にあたっています。
 このうち住宅まちづくり部としての対応として、府営住宅では、コロナの影響により住宅の退去を余儀なくされている方に対し、当座の住居として約100戸を確保し、低額な家賃で提供するとともに、既入居者についても収入が減少した世帯については家賃の引き下げや減免措置を講じており、これらをあわせて約770世帯に適用しています。
 本来の事業の取組みについては、「活力と魅力ある都市空間の創造」「府民の暮らしを支える安心な住まいの実現」「災害に強く環境にもやさしい住まいとまちの実現」を運営方針の重点テーマとして掲げ、事業を進めてきました。ただ、取組みにあたりコロナの影響は避けられず、工事の中止はありませんでしたが一部の事業で休止や延期、縮小が求められ事業進捗に関しては思うに任せない1年でした。

■確かにそうですね。

 都市空間の創造では、グランドデザイン・大阪とグランドデザイン・大阪都市圏を推進しています。大阪市域では、うめきた2期や大阪城東部地区、大阪都市圏では大阪広域ベイエリアまちづくり、広域サイクルルートの取組み等を進めています。
 うめきた2期については、2024年夏の先行まちびらきに向け、順次基盤整備が進められています。昨年12月には民間開発事業が起工しました。大阪城東部地区では、新大学のメインキャンパスが2025年4月に開所する予定です。同地域は、全体で53ヘクタールで、このうち約2ヘクタールに新キャンパスが整備されます。この新大学を先導役に今後、段階的にまちづくりを行い、多世代が集い、交流する国際色のあるまちづくりを目指します。
 新大阪駅周辺地域の開発にあたっては民間活力の導入が不可欠ですが、それはリニア新幹線や北陸新幹線における新駅の位置が決まってからになるでしょう。このため現在は、同地域のまちづくりに対する機運醸成に向けプロモーション活動を続けていきます。

■なるほど。

 大阪都市圏では、広域連携型のまちづくりとして、各エリアの自然環境や歴史、文化資源を活かしながらまちづくりに繋げていく取組みを進めています。その一つが大阪広域ベイエリアのまちづくりです。大阪市から堺市、泉州地域までの臨海部を活性化させるもので、昨年八月には大阪市域から堺市域までの取組みを示したビジョンの中間取りまとめ(案)を作成しており、今後は今春を目途に、岬町までの大阪湾全体のビジョン(案)を取りまとめる予定です。
 また、広域サイクルルート連携事業として、3年前から北部から東部、南部の地域で実証実験を実施し、課題も見えてきたことから、その課題解消に向けた取組みを継続していきます。
 一方、グランドデザイン・大阪の策定から8年、都市圏は4年が経過し、その間に万博やIR誘致等の新たな状況が出てきたことから、2つのグランドデザインを整理し1つに統合しようと考えています。ベイエリアのまちづくりビジョン(案)が今春にも取りまとめができれば、それに続けてそれぞれのグランドデザインを整理統合し、まちづくりのビジョンとして策定していきます。

  耐震化着実に進む

■新たな方向性を打ち出すものですね。

 安全な住まいの実現では、現在、府内にある府営住宅11万8千戸、市や町営住宅14万2千戸の計26万戸と公社・URの住宅と合わせた40万戸近い公的賃貸住宅について、今後、減少する世帯数や人口に合わせてこれらの住宅をどう対応していくかが課題となっています。具体的には量的な縮小を図り、増加傾向にある民間賃貸住宅に代替できるものは代替していけるよう、来年度に改訂する住まうビジョン大阪に盛り込んでいく予定です。
 また、府営住宅の基礎自治体への移管もさらに進めていきます。昨年は府営住宅のある市町を訪問して働きかけを行いました。個別の住宅の状況や市町のまちづくりの考え方を十分踏まえ、今後も継続して移管に取り組んでいきます。
 災害に強いまちづくりでは、密集市街地解消と建築物の耐震化を引き続き実施します。密集市街地は、平成26年には2248ヘクタールあった対象地域が今年度末には1014ヘクタールまで減少する予定です。計画策定当初は今年度で全て解消する予定でしたが、計画通りに進まない部分もありました。
 このため、現在、令和3年度以降の密集市街地対策の目標や具体的な取組みを示す「大阪府密集市街地整備方針」の改定を進めています。地理情報システムにより解消効果の大きい地点をピンポイントで特定し、重点的に事業を実施するなどの取組みを打ち出し、令和7年度末までには9割以上を解消し、令和12年度末までには全てを解消することを目標に取り組んでいきます。
 また耐震化では、住宅については令和7年までに耐震化率95%の目標に対し、現在では89%と着実に進んでおり、多数の者が利用する建築物も95%の目標に対し94%と、概ね達成できたかと思っています。ただ、耐震診断が義務付けられている大規模建築物や広域緊急交通路沿道の建築物は、令和7年を目途に概ね解消としており、達成は容易なことではありませんが、粘り強く取り組んでいきます。
 今後とも、府民のくらしを支える安心な住まいの実現に向けて、着実に取組みを進めます。

■ありがとうございました。



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