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マンション適正管理サポートセンター(MTS) 草刈保廣会長 ・ 小野利行事務局長
 【2021年01月25日掲載】

大規模修繕工事

「プロポーザル+総合評価落札方式」を推進

国交相に要望書提出

管理組合が業者の提案評価
   

草刈会長(左)と小野事務局長

 


 老朽化マンションの増加が強く懸念される中、昨年6月に「改正マンション管理適正化法」が成立した。この法改正により、今後、マンション管理組合には公のために適正管理することがより強く求められるとともに、修繕工事に関しても内容や金額の妥当性が問われることになる。一般社団法人マンション適正管理サポートセンター(MTS)では、大規模修繕工事の発注適正化をめざし、独自の発注方式である「プロポーザル+総合評価落札方式」の推進に力を入れる。MTSの草刈保廣会長と小野利行事務局長に現在の取組みなどを聞いた。

■昨年末、MTSでは国土交通大臣宛に要望書を提出されました。

 昨年6月に改正マンション管理適正化法が成立した。国交省は基本方針・管理適正化指針の方向性の中で「発注等の適正化」「修繕工事及び設計コンサルタントの業務の適正化」の2項目を挙げ、発注方式のガイドライン見直しを検討している。そこで、同省のマンション政策室を訪れ、われわれが推進している大規模修繕の新たな発注方式「プロポーザル+総合評価落札方式」について、ガイドラインで正式に位置づけてもらえるよう要望した。
 今回の法改正では、マンションが適正に管理されているかを自治体が認定する「管理計画認定制度」も創設されるなど、管理組合には適正な修繕工事の実施がこれまで以上に強く求められる。しかし、現在の発注方式の主流である「責任施工方式」「設計監理方式」では管理組合が蚊帳の外に置かれがちで、不正も起こりやすい。加えて業者は修繕積立金ありきで割高な工事費、過剰な工事項目、仕様を設定する。そういったケースが多々ある。2017年には施工会社から設計コンサルタントへのバックマージンなどの不正が発覚し、世間から厳しい批判を浴びた。ただ、そもそも業界体質に問題があった。施工会社が悪質なコンサルを育てたともいえる。

■だからこそ、大もとの発注方式を多様化する必要があると。

 何より、管理組合が主体的に意思決定できる仕組みづくりが不可欠だ。業者選定の過程において専門家はあくまでサポート役に徹すること。そのうえで恣意性を排除し、公平・公正で透明性を高める。あわせて提案力と施工力を有し、コストパフォーマンスに優れた業者を選ぶ必要がある。その最適な方式が「プロポーザル+総合評価落札方式」だと確信している。

■公共工事の手法を導入することで適正発注をめざす。具体的な進め方は。

 修繕工事の肝は正確な健康診断だ。まずは管理組合とMTSのプロのサポーターが一緒に劣化調査と診断を実施し、必要な工事を見極める。そこに管理組合の要望事項を加え、管理組合とサポーターで工事の予定価格を決定する。その後、業者の公募を行い、仕様書を公開する。もちろん、予定価格は事後公表とし、超過した業者は失格とする。

■経営事審査(P点)で900点以上や資本金1億円以上といった参加資格がこれまで参入障壁ともなっていた。公募条件はどうしますか。

 地域に根差し、大規模修繕を主軸事業とする施工業者の参加を促す。「地域の仕事は地域の業者で」。それが建設業の根幹であり、地域経済の活性化にもつながる。例えば、大阪市内の100戸のマンションで工事の予定価格が8千万円の場合、地域要件は近畿地区に本社登録があること。施工能力に関しては「工事実績(下請含む)は3年間で8件以上」「配置予定技術者は3千万円以上の工事を3件以上の経験を有すること」「一級施工管理技術者を有する社員が5人以上」などを条件とする。資本金は5千万円以上あれば十分だ。この条件なら競争性も確保できる。

■なるほど。

 公募を経て参加業者が決まれば、劣化診断の結果と管理組合の要望を詳しく伝えるとともに現地説明会を開く。それらを踏まえ、提案書と見積書を提出してもらう。なお、業者から提出された資料についてはMTSの事務局でマスキングを施す。恣意性を徹底排除するためだ。最終決定するまで業者名は伏せておく。

   知見引き出し「100年マンション」めざす

■評価テーマについては。

 29業種ある公共の建築工事とは違って、大規模修繕は主に「足場」「防水」「塗装」からなる仕上業。だから評価項目もできるだけシンプルにした。基本テーマでは「防犯」「安全」に対する各社の姿勢、現場に応じた対策がとられているかを確認する。技術提案では「劣化診断にもとづく施工計画」と「管理組合からの要望」をテーマとし、これら4項目について業者に提案を求める。

■それぞれのテーマを管理組合自らが評価するということ。

 各社の提案についてはMTSが作成した評価表にもとづき、管理組合のみなさんが五段階評価で採点を進める。従って、提案書は簡潔で分かりやすいことが大前提。そして、各テーマの点数を足し合わせ、その合計点を入札金額で除算して落札業者を決める。サポーターもお手伝いとして評価の場に同席する。何でも質問、相談してほしい。

■業者の実力が最も問われるのは「劣化診断にもとづく施工計画」です。評価ポイントは。

 修繕工事そのものについては、例えば「雨掛かりと非雨掛かりに分けて提案しているか」「シールは劣化状況に応じた提案ができているか」といった観点で評価する。外壁塗装を具体例に説明すると、雨掛かりのない部分は下地をしっかり処理して上塗り1回で仕上げ、雨掛かり部分はもう2回上塗りする。材料の耐久性が飛躍的に向上したこともあり、こうすれば20年はもつ。12年を目安とする大規模修繕の周期も延ばせる。施工面でいかに工夫を凝らしているかがポイントだ。
 また、プロの知見を活かして修繕周期を延ばすことができれば、修繕積立金や管理費、長期修繕計画などを根本から見直せる。管理不全に陥るおそれのあるマンションについても、適正管理へと向かうことができる。
 「プロポーザル+総合評価落札方式」で住民のみなさんと一緒に100年マンションをめざしたい。



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