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近畿建設躯体工業協同組合 山岡丈人理事長  【2020年07月13日掲載】

一番に「職人の処遇改善」

モチベーション維持に月給制も


 近畿建設躯体工業協同組合の山岡丈人理事長はこのほど、就任にあたっての会見を行った。今年5月の総会で副理事長から就任。会見で山岡理事長は、「職人の処遇改善が一番の課題」とし、中長期的に取り組んでいくとしながら、「業界として守るべきところは守っていきたい」とし、新型コロナに対しても「柔軟に対応していく」と語った。

 就任にあたっては、これまでも歴代の理事長が言い続けてきた、「職人の処遇改善を第一に取り組んでいく」と抱負を語る。取組みにあたっては、躯体組合自体は建団連の加盟団体であり、また、日本建設躯体工事業連合会の下部組織であることから、「これら上部団体の意向も踏まえて活動する必要はある」とした。

 しかし、社会保険未加入問題をはじめ専門工事業の抱える課題については、他の産業に比べて遅れている部分はあるとしながら、「この業界独自のやり方というものもあり、何でもかんでも他の産業に倣うということは違うのではないかと思っている」と指摘。

 業界独自のやり方として守っていかなければならない部分はあり、また、直していかなければならない部分も勿論ある―とし、「このため業界の健全化や組織としてのあり方について、どこまで取り組んで行けるか分からないが在任中はやっていきたい」と語り、組合として標榜する“行動する組合”として、「動いていかなければと思っている」と決意を見せた。

 現状については、「とび工が不足気味」とするが、とび工が不足すれば、躯体構造がS造に代わりRC造が増えるとし、それにより大工と鉄筋工が不足すればS造に代わるとする。「この繰り返しだが、絶対量は不足している。その時に不足している業種により躯体構造が変わるだけ」としながら、現在では、高層建築は殆どがPC化されており、「作業員自体もそんなに必要がなくなってくるのでは」との見方を示す。

 ただ、「現場が減り、職人が減ると全てが小規模化してしまう」とし、かつてIT産業が席巻し始めた時、建設業は斜陽産業と言われていたが、災害対応や建物のリニューアル、インフラの老朽化対策等で、業界が上り調子になっていたが、今回のコロナにより、「今後、どう変わっていくかが問題。人手不足には、一時的に外国人に頼る必要はあるが、やはり日本の若い人に担ってもらいたい。そのためにも魅力ある業界とする必要がある」と説く。

 職人不足に関しては、外国人技能実習生受入事業を含めて、「コロナ以前からの問題」であり、新規入職者の獲得はもとより、「離職者の引き留めも課題」とする。離職理由については、請負仕事の減少によるモチベーションの低下があり、このため、「モチベーションを維持しながら月給制を導入することが求められてくる」とする。

 山岡理事長は、かつて自社で元請の訓練校を設立し、訓練生は全て月給制として多能工を養成していたことを例に挙げ、「その時はモチベーションも維持できたし、求人募集でも学校側や保護者の対応が違った」とし、こういったケースもヒントになるのではとした。

 しかしながら、月給制とした場合の課題として、保険料負担等で「会社を維持できない業者も出てくる。このため一次、二次とそれぞれが直用化することが必要だが、その場合。どうしても重層化は避けられない」と指摘。月給制にした場合、メリットとデメリットはあるが、組合として支援していくことも必要ではとの考えを述べた。

 また、社会保険未加入問題と働き方改革、建設キャリアアップシステムへの取組みについては、「コロナの影響によりライフスタイルが変わればワークスタイルも変わって来るのだろうし、その時に働き方改革がどうなっていくのかが問題」とコロナによる影響を懸念しながら、現場そのものは大きくは変わらないが、「柔軟に対応することが求められ、建設業界全体としての取組みで変わってくるところもあるだろう」と語る。

 また、テレワークにより在宅勤務が進めば、ビル需要が減少し、民間の建設投資が冷え込み、2〜3年先には、「かなり建設投資が落ち込むのでは」との見方を示しながら、その時に労働者不足がどういった状況になっているかは、「現時点では読めない部分はあるが、やや緩和されているかとは思っている。いずれにしろ若年層への入職促進は長い目で取り組んでいく必要はある」。

 山岡理事長は、「とにかく、目の前の課題に一つずつ取り組んでいくこと」とする。長期的な課題は職人の処遇改善だが、「短期的にはコロナ収束後の対応と中期的には月給制への導入で、どこまでやれるか分からないが、取り組んでいきたい」とした。

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 今年4月、黄綬褒章を受章。祖父・父親と三代にわたっての受章で、組合の仕事に携わったお陰でもあり、「先代から引き継いだ相続の一つ」とし、これにより「業界のためにもう一仕事していきたい」。

 自身も訓練校4期生として多能工の訓練を受ける。職長として初めて手掛けた工事も含め、「現場で働いていた頃が一番楽しかった」と語る。趣味は特にないが、休日はジムでプール。晩酌は欠かさない。ゴルフは仕事絡みが殆ど。大阪市出身。61歳。

   
   

 山岡丈人(やまおか・たけひと)昭和58年3月徳島大学工学部中退、同年3月山岡建設入社。平成5年3月取締役副社長、同10年5月から代表取締役社長。組合では、平成12年の理事から専務理事を経て同18年から副理事長。また、大阪府建団連副会長、日本建設躯体工事業団体連合会副会長も務める。大阪府知事表彰、国土交通大臣表彰を受章。

 

 

 
 


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