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大阪労働局労働基準部 堀 幸男安全課長  【2020年06月29日掲載】

エイジフレンドリー職場へ!
 みんなで改善リスクの低減

死亡災害撲滅に向けた取組みを推進

墜落・転落災害防止へ「命綱GO活動」強力に展開


 第93回全国安全週間が今年も7月1日から7日まで、厚生労働省大阪労働局らの主唱、建設業労働災害防止協会大阪府支部らの協賛を得て、「エイジフレンドリー職場へ! みんなで改善 リスクの低減」をスローガンに展開する。昭和3年に実施されて以来、「人命尊重」を基本理念に、1度も中断することなく続けられている。
 令和元年における大阪府内の労働災害発生状況は、死傷災害や死亡災害の増加傾向に歯止めがかかり減少に転じた。しかし、建設業における死傷者数については、大幅な増加となった平成30年比で微増となり、そして、今もなお墜落・転落による死傷者数が高い割合を占めている。
 大阪労働局では「リスク “ゼロ” 大阪推進運動」の一つ、「命綱GO活動」をさらに強化し、「墜落制止用器具のフック掛け替え時の墜落防止」や、墜落時の衝撃緩和を図る「2丁掛けフルハーネス型墜落制止用器具の使用促進」など墜落・転落災害の防止に向けた取組みを力強く進める。これら災害防止活動の中心的な役割を担う大阪労働局労働基準部安全課の堀幸男課長に安全行政の取組みなどについて聞いた。

  思いやり持った安全管理を  「リスクアセスメント」が大きな効果

■初めに、令和元年における大阪府内の労働災害発生状況についてお聞かせください。

 令和元年における大阪府内の労働災害発生状況ですが、休業4日以上の死傷者数は、前年と比べて166人減少し、8806人となりました。
 死亡者数も53人と、前年より19人減少しております。ここ数年死傷災害や死亡災害は増加する傾向にある中で、平成30年の急激な増加に歯止めがかかり減少に転じたことは大変喜ばしいことです。
 しかしながら、大阪府内の建設業における死傷者数は、大幅な増加となった平成30年の785人よりも多い799件が発生し、1・8%と微増となっております。
 そして、このうち340人が墜落・転落により被災しており、42・6%を占めています。
 さらに、建設業における死亡者数は20人と、前年に比べ5人減少しておりますが、業種別では最も多く、全体の37・7%を占める状況となっています。
 また、死亡者20人のうち65%の13人が墜落・転落により亡くなっています。
 その発生状況を見てみますと、「足場の移動中に墜落」、「丸太足場の組立中に墜落」、「屋根の補修工事中に、その屋根から墜落」、などであり、いずれも、作業床や手すりの設置をはじめ、親綱を張って要求性能墜落制止器具を確実に使用する、といった基本的な墜落防止措置により、防止できたものがほとんどです。
 建設業における労働災害の発生を防止するためには、労働安全衛生法等の法令の遵守はもちろんのこと、短時間の作業、臨時の作業であっても、必要な安全措置を講じる、安全な作業手順を遵守する、また、それらが確実に行われるよう職長や同僚による声かけを実施するなど、仲間の命を守るのだという思いやりを持って、安全管理を行っていただければと考えています。
 労働災害防止には、危険性又は有害性の特定、リスクの見積り、リスク低減措置の検討等を行い、その結果に基づく措置を実施する「リスクアセスメント」が大変効果があると考えています。

■全国からみた大阪の状況についてはいかがですか。

 全国の令和元年の労働災害による死亡者数は845人で、前年の909人に比べ64人減少し、過去最少となりました。
 大阪局においても53件と一昨年72人から減少しております。
 死亡者数が多い業種は、全国では建設業が269人で最も多く、次いで、製造業が141人、陸上貨物運送事業が101人となっています。
 建設業での死亡災害は、全国では前年に比べ40人、12・9%減少し、大阪では20人と前年に比べ5人、20%減少しました。
 さらに、建設業の死亡災害の内、墜落災害の占める割合については、全国では40・9%の110件ですが、大阪では65%の13人と全国よりかなり高い状況となっています。

■そのような状況の中で、今年度の大阪労働局の目標と重点事項を教えてください。

 今年度は、平成30年度を初年度とする「大阪労働局第13次労働災害防止推進計画」の3年目の中間年度であり、この13次防では死傷災害を平成29年と比べて5%以上減の7927人以下に、死亡災害を15%減の51人以下とすることを目標としています。
 先ほど申し上げたように、令和元年は死亡災害、死傷災害とも前年より減少し、死亡災害については全産業で56人以下とする目標は達成しましたが、死傷災害については全産業で8175人以下とする目標には届いておりません。
 建設業についても、前年より減少しましたが、死亡災害全体の37・7%を占める状況であり、そのうち墜落・転落が65%も占めていることから大阪労働局としましては、墜落・転落による災害を30%以上削減するという目標を立てております。
 この目標を達成するために、できる限り多くの建設現場のパトロールを実施し、年末にも、近畿ブロック各労働局と連携し一斉に建設現場に対し現場指導を実施することとしています。
 さらに、今後増加が見込まれる高年齢労働者について「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の周知徹底と外国人労働者の労働災害防止のため、危険体感教育や現場送り出し教育等の安全衛生教育の徹底を図っていきます。

  局長メッセージ、ユーチューブで広く呼び掛け

■建設業における取組み及び注意事項については。

 今年の大阪府内の建設業における労働災害による死亡者数は、5月31日現在で5人と、昨年の同時期より1件減少しており、全産業の死亡者数が16人で、建設業の占める割合は31・25%となっております。しかし、分類上は他の業種として計上していますが、警備員が建設現場で建設用機械に接触して死亡する災害も現場で発生しており、この災害も含めると昨年と同様のペースで死亡災害が発生していることになります。労働災害死傷者数自体は、5月末日の速報値で210人と昨年同期に比べ18・9%程減少しています。
 特に事故の型別で見たときには、死亡者数のうち墜落・転落災害によるものが3人と60%を占めており、死傷災害についても210人のうち「墜落・転落」によるものが73人と34・8%を占めており、最も多くなっています。13次防の目標達成のためには、平成30年度から展開している「リスク “ゼロ” 大阪推進運動」の中の活動のひとつである「命綱GO活動」をさらに推進し、何としてもこの墜落・転落災害を防止する必要があります。
 「命綱GO活動」では、墜落制止用器具のフックの掛け替え時の墜落防止や、万が一墜落しても墜落時の衝撃の緩和を図る、2丁掛けフルハーネス型墜落制止用器具の使用の促進を進めています。
 皆様方にも、この活動の趣旨を御理解いただき、積極的に墜落災害防止への取組みをお願いいたします。
 7月1日から実施される令和2年度全国安全週間におきましても、その実施要項にて建設業の労働災害防止対策について、「足場等からの墜落防止対策の実施、手すり先行工法の積極的な採用、改正されたフルハーネス型墜落制止用器具の積極的な導入と適切な使用」や「適切な安全衛生経費の確保」等の実施を提唱しております。また、期間中ユーチューブにて動画による局長メッセージを投稿し、広く労働災害防止を呼び掛けております。
 今年も熱中症に注意が必要な季節になりました。昨年は、大阪府内の職場での熱中症による休業4日以上の死傷者数は50人と昨年より39件減少しておりますが、一昨年の2倍程度の件数が発生しており、死亡者も2人発生しています。
 昨年に引き続き、今年も5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、予防対策に取り組んでいます。
 同時に、職場における熱中症による死亡者ゼロを目指し、異常を認めたときにはすぐに救急車を呼ぶなどの対応を行っていただくと共に、労働者が「体調が悪いです」と同僚や上司などに伝えやすい職場・現場環境の実現をお願いいたします。

■最後に一言お願いします。

 今年は4月7日に新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が宣言され、同宣言が5月21日まで延長されたことから、工事が予定通り進捗していない現場も多くみられるのではないかと思われます。工期の遅れを取り戻すために、無理な工事の進め方をすれば、思わぬ災害を引き起こすだけでなく、過重労働による健康障害等の問題に繋がる懸念もございます。労働災害の防止はもちろんですが、長時間労働の抑制や週休2日制の導入等の働き方改革に積極的に取り組んでいく必要があると考えています。



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