日刊建設新聞社   CO−PRESS.COM
大阪府都市整備部 森岡武一部長  【2020年01月27日掲載】

インフラ整備大きく動く

モノレール延伸やなにわ筋線など

府営公園の管理運営で新たな制度


 大阪の成長を見据え、道路や鉄道、治水など、都市基盤整備や府民の安全・安心を支える防災・減災対策に努める大阪府都市整備部。今春には大和川線が供用を迎え、モノレールやなにわ筋線等の事業化が進むなど、インフラ整備が大きく動き始めている。事業の進捗を見守る森岡武一部長は、「大阪も低迷期を抜け出したのでは」と語る。その森岡部長に、今年度事業の進捗状況と来年度事業の見通しについて聞いた。

■まずは今年度事業の状況から。

 今年度は、大阪、関西の成長を支えるインフラ強化、防災・減災と安全・安心の確保、維持管理とストック活用の3つを柱に事業に取り組んできました。成長を支えるインフラ強化のうち、道路では淀川左岸線が動きだし、大和川線は今春に供用を開始します。淀川左岸線では2期は、大阪市と阪神高速の事業ですが万博に向け道筋が見えてきており、延伸部では測量や設計等に着手するなど、それぞれに進捗しています。
 鉄道では、大阪モノレール延伸に関して、来年度の現地着手に向け、都市計画事業認可等の取得を、なにわ筋線に関しては、都市計画決定など、それぞれ必要な手続きを今年度中に終えることとしています。これら事業の動きを見ていますと、大阪もようやく低迷期から抜け出し、右肩上がりになってきたかなと思っています。
 また港湾では、大阪市と府の港湾局を「大阪港湾局」として統合し、今年10月頃の業務開始を目指すことが、府議会と市会で可決されました。

■昨年も自然災害が多発しました。

 防災・減災と安全・安心については、安治川と木津川、尻無川の三大水門の更新が事業化され、まずは、木津川水門の詳細設計に着手しました。昨年の台風第21号でこれら水門が機能し、約17兆円の被害を防ぐことができたことで、その整備の必要性が改めて認識されました。改築にあたっては、高潮だけでなく津波への対応も強化します。このほか安威川ダムも順調に進捗し、工事も最盛期を迎え、ダム堤体も令和3年度末には完成する予定です。
 また、南海トラフ巨大地震の液状化対策として10箇年計画で実施してきた河川と港湾での防潮堤耐震化事業のうち、緊急性の高い5箇年分は、昨年3月に完了しています。治水事業では、寝屋川流域の総合治水対策のうち、北部地下河川で地下河川では全国初となる大深度地下使用認可を取得し、昨年10月には城北立坑築造工事を発注しました。河川事業の立坑としては日本一の深度になります。
 ソフト面では、寝屋川流域で一昨年から運用している避難行動タイムラインを、昨年は安威川流域で運用を開始しました。引き続き他の流域に広げるとともに、高潮のタイムラインについても泉州での運用開始を目指し進めてまいります。いずれも各首長から積極的に協力を頂いています。
 このほか、国の防災・減災、国土強靱化3か年緊急対策も進めていきます。全国で多発する災害をうけ、国でも3か年の次を見据えた取組みを検討されているようですので、それらを活用し、治水安全度の向上に努めたいと思います。

■インフラの維持管理に関しては。

 維持管理では、平成27年に策定した大阪府都市基盤施設長寿命化計画に基づき順次、取組みを進めています。基本は予防保全に重点を置いていますが、設備系統については、ある程度の時間経過で部品交換する時間管理型で取り組んでいます。いずれも経過観察と点検は不可欠です。
 また、府と市町村、大学と連携し、各土木事務所に「地域維持管理連携プラットフォーム」を設置して、技術力向上への取組みとともに、市町村に対する技術支援を行っています。このうち橋梁点検については、プラットフォームを活用して15市町の点検業務を一括発注しました。
 さらに、点検結果等のデータの蓄積と管理、計画策定支援を行う維持管理データベースシステムを構築し、14市町村1団体が参加して本格運用を開始しました。このほか、新技術の導入として、山間部での道路法面の点検などにドローンを活用しており、また、市街地での活用を目指して操縦者養成のための研修も始めています。

■府営公園では、新たな取組みが始まります。 

 府営公園は現在、指定管理者制度を実施していますが、公園でのにぎわいを促進するため、新たな管理運営制度を検討しています。現在、指定管理制度を行っている18公園が、令和3年度と4年度に更新期限を迎えることから、その更新にあたって新たな制度を採用することとしています。
 新たな制度では、管理者が公園全体をマネジメントするPMO型指定管理、公園の一部を対象に管理者が賑わい施設等を整備するP―PFI、指定管理者に対してイベント等のソフト事業の実施を求める―といった3つのタイプを検討しています。来年度から順次、公募を始めるに際して、どういった提案が出てくるかを把握し、応募提案を踏まえて公募要項に反映させるため、今年度に事前事業提案を募集し、多くのアイデアを頂くことが出来ました。
 この取組みは、現行の指定管理者制度が、維持管理がメインとなっていることから、指定管理者の持つノウハウやアイデアをより活かすことで、公園に賑わいをもたらし、集客力を高めようとするものです。

■来年度の事業では。

 今年度同様に3つの柱で事業を継続していくことになります。公園は事業者公募が始まります。モノレールやなにわ筋線に関してはいよいよ本格的に事業が開始されます。維持管理では、やはり三大水門更新に順次、取り組んでいきます。さらに国の防災・減災、国土強靱化3か年緊急対策についても、着実に進めていきます。
 ただ、事業の推進にあたっては、建設業では人手不足が懸念されており、府としても現場の4週8休を推進し、職場環境の改善に努め、ICT施工に関しても、土工・舗装工に加え、来年度から新たに河川浚渫工を追加する等、推進してまいります。工期に関しても、従来から債務負担行為の積極的活用により適正工期の設定に努めていきますが、建設業界の協力と支援もお願いします。

■ありがとうございました。



Copyright (C) NIKKAN KENSETSU SHINBUNSHA. All Rights Reserved.
当サイトを利用した結果に関するトラブルなどに関しては、当社としては一切責任をとりかねます。