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座談会 近畿地方整備局×近畿建設青年会議 【平成31年03月25日掲載】
 
       「週休2日」必要性は認識

       「ICT」継続した発注を

座談会出席者
▽寺沢直樹近畿地方整備局企画部企画調査官
▽吉井久尚近畿建設青年会議会長(吉井建設代表取締役)
▽時岡健介同副会長(時岡組代表取締役社長)
▽山田浩之同副会長(明豊建設代表取締役専務)
▽才花毅同副会長(才花建設代表取締役)
▽星山和義同副会長(城産組執行役員顧問)
▽桑原伝浩同顧問(桑原組専務取締役)
▽山本修嗣同幹事長(キタムラ営業部次長)


 

寺沢調査官 
 
 
 
 座談会のもよう    
 


 日刊建設新聞社では、近畿地方整備局と近畿の各建設業協会青年部で構成する近畿建設青年会議との座談会を開催した。喫緊の課題となっている担い手確保や働き方改革に向け、ICT工事や週休2日等の施策を進める整備局と、人材不足を実感しながら災害対応や維持管理など、地域の守り手としての役割を担う地域建設業者が、それぞれの立場で、それらの取組み状況と問題点などについて意見や考え方を語ってもらった。

 初めに寺沢調査官から、担い手確保や働き方改革に関する整備局の取組みについて説明が行われた。技能者に関し寺沢調査官は、現在、29歳以下が全体の10%程度であり、「全体の4分の1を占める60歳以上の技能者が引退した場合、若年入職者を増やし、どうやって育成するかが業界の課題となっている」と指摘。

 このため国交省では、生産性向上に向け、アイコンストラクションの推進やコンクリート工の規格標準化等の全体最適の導入、施工時期の平準化を進め、近畿地整では独自の取組みとして、工事進捗会議を定例化し、受発注者間のコミュニケーションを密にすることで施工の円滑化を図っているとした。

 アイコンストラクションについては、「周知の段階から、現在は体験する段階に来ており、今後これを加速していく」とし、週休2日の取組みでは、平成27年度から試行工事に取り組むとともに、近畿地整では、実施に伴う労務費や機械賃料、間接費等の補正、工事工程の受発注者共有等を実施しているとした。

 引き続き、これらの取組みについて青年会議から、それぞれの現状が語られた。

 まず週休2日への取組みでは、「新入社員は隔週で実施」、「工場など内勤部門は完全実施」、「年間休日取得日数を定めており、少しずつ成果は上がっている」など、現実に即した取組みが行われているが、実施にあたっては、新入社員を休ませるため先輩社員が出勤することや、「部門によって土曜日出勤もあり、休みの部門との不公平がある」など、全社的な週休2日実現には、ほど遠い状況となっている。

 しかしながら、週休2日そのものについては、各府県とも「必要」との認識で一致。中でも若年者の確保の上では「土日の週休2日」が重要とされた。これについては、「土日でないと若い子は興味を持たない」、「学生は土日休が定着しており、土曜日出勤は馴染まない」等に加え、人材確保は他業種との競争となることから、「建設業だけが取り残されるわけにはいかない」ことや、「新卒者は製造業に行ってしまうので、採用条件でも近付けていかなければならない」ことなどが挙げられた。

 民間工事と日給制課題

 週休2日を実施できない要因では、「民間工事や下請への対応」と「日給制社員への手当」のほか、「中堅社員は週休1日が当たり前で、馴染まない部分もある」等の業界全体として長らくその習慣がなかったことや「降雪地域では難しい」ことなど、建設業の構造上の問題や地域固有の課題が指摘された。

 現状では、工期前半の準備や打合せ期間中は完全週休2日としているが、「着工後は1日でも休めないこともある」ことや日給制の場合、「週休2日制になってその分の日当が出せるかとなれば、補正はあるが、実際そこまで手が回らない」、「工期を延ばせば売上も下がり、経営が成り立たなくなる」など、「完全実施にはハードルは高い」と口を揃える。

 また、実現に向けては企業努力も求められているが、「有給休暇を消化するより代休消化の方が多く、かつそれすら消化できない現状の中で週休2日は困難」とし、さらに、働き方改革関連法案が実施された場合、「休みを日数的に確保するためには休日出勤も必要となってくるが、法律で規制されると難しくなるのでは」と懸念する意見もあり、週休2日を実現するためには、「強制的に土日の現場閉所を実施した上で、問題や課題を抽出し、解決策を考える必要があるのでは」とする意見も出された。

 普及には自社施工必要

 ICT施工については、直轄工事に続き府県での発注も出始め、受注した企業からは、「コスト的にも効率的にも良かった」、「省力化が図れた」と、その成果を挙げながら、課題として、「単発工事で継続して工事がない」ことが指摘された。単発工事の場合、コスト的にも「機械操作も含めてリースかレンタルでの外注」に頼らざるをえないことから、自社で施工実績を積むことができないままとなっている。

 このため、「自社施工しないと普及しないのではないか」、「今後、自社施工とするためのプロセスを考える必要がある」とICT適用工事の継続した発注が求められた。このほか、府県発注工事では、「測量以外は難しい」、「一括でなく、導入可能な部分だけでも良い工事もあり、そういった取組みなら、やる気のある業者は少なからず出てくるのでは」との意見もあった。

 これら意見について寺沢調査官は、「それぞれ課題があることは認識している」としながら、週休2日に関しては、「若者が求める仕事のあり方と現役世代との価値観の違い等については共有できており、目指すところと現実の課題については、はっきりと見えてきたのでは」と、これまでの取組みに一定の成果があったとした。

 また、ICT施工について近畿地整では、地方自治体向けの講習会とともに、C・Dランク業者を対象とした体験会を開催し、この中では「8割の企業が未体験だった」ことに触れながら、「経験を積むことで定着すると思うが、単発的な工事だけでは難しい」ことには理解を示しながら、「地域建設業が前向きに取り組んでいることは大事なこと」だと評価した上で、今後は、外部委託から自社施工への意識の転換も重要で、「機械操作やデータの扱い方等の部分は、若手が興味を示すところではないか」とし、その辺を上手く回るように一緒になってやっていければと期待を寄せた。

 地元工業高校生の減少

 一方、技術者や技能者等の状況に関しては、「女性技術者の活用を検討中だが、勤務時間等で配慮が必要」、「ICTでの新人活用を図っている」とする意見が出た。新卒者の採用では、工業高校の専門課程でも、生徒数の定員割れや土木学科の名称変更等により、「建設業を志望する学生自体が少なく、他産業へ流れている」のが現状。

 さらに、工事量が減少した時期に地元工業高校からの採用を控えていたところ、「学校側とのパイプが途絶えてしまった」ほか、就職・転職フェアに参加しても集まらないことや、「大手と違って会社の存在自体を知らない人が多い」など、地域建設業の厳しい状況が報告された。

 また、受け入れにあたっても、「新人を指導する社員自体の指導経験が少ないことも課題」であり、最近では、専門学科以外からの新入社員が増えてきたことから、「社内教育マニュアルを見直した」ところもあった。このほか、「現在でも日常的に残業が続く中で、若い子が勤まるかどうか」と現状から定着率を不安視する向きもあり、このため「雇用延長ではなく、働けるところまで働いてほしいと考えている」とするところもあった。

 地方業者の評価制度を

 このほか、技能工を直用としていた企業から、経審など企業評価システムが、「技術者寄りになり、格付けのため技術者ばかりを増やす傾向にあるため直用工を下請にした」ことにより、地域建設業者の体力が低下し、自社施工ができず、結果として「下請頼りの企業が増え、緊急時に対応できなくなることがいいのかどうか」と懸念する意見がでた。

 このため、「技能工を直用とした場合に加点するなどの措置があれば、人材も増えてくる」と地方業者向けの評価制度を要望。それにより「体質が改善でき、採用対象も拡大する」とし、併せて、技能資格についても、「資格取得までの期間も長いため、思い切った改革も必要では」とした。また、建設キャリアアップシステムに関しては、殆どが「検討中」としながら、「新規採用も大事だが、在職者をいかに活用するかでキャリアアップシステムを役立てたいが、運用を理解する必要がある」等の意見のほか、システムが、「大手企業の技能者囲い込みに使用されるのでは」と、技能者の引き抜きにつながらないか懸念する声も出た。

 寺沢調査官は、建設業界自体は厳しい時期は抜け出したが、「世間的にはその雰囲気がまだ残っており、担い手確保を難しくしているが、若手がいなくなる状況は避けなくてはならない」としながら、未だ厳しい状況だが、「この業界に入った者が、建設業は面白い仕事だと人に言えるように時間をかけてやっていきたい」と述べ、今後の取組みへの協力を要請した。



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