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大阪府都市整備部 井出仁雄部長  【平成31年02月04日掲載】

インフラ整備の重要性再確認

昨年の災害 活かされた過去の教訓

防災対策の取組みを推進


 昨年に発生した大阪北部地震や台風21号は、府内各地域に被害をもたらしたが、大阪市内では、三大水門はじめとする防御施設が浸水を防ぐなど、都市基盤整備の重要性が改めて示された。これら都市基盤について、大阪府都市整備部の井出仁雄部長は、「過去の教訓の積み重ねが活かされたもの」と指摘する。万博の大阪開催が決まり、今後は交通インフラ等の整備が動き始めるが、「防災・減災対策も含め、次世代に引き継ぐ社会基盤を整備するのが我々の役目」と語る井出部長に、今後の事業展開等を聞いた。

■まず、昨年を振り返って。

 初めに、昨年11月に大阪での万博開催が決定したことについて、これまで多くの方々にご協力とご支援を頂いたことに、心からお礼を申し上げます。
 さて、昨年につきましては大阪北部地震と台風など、いろんな面において自然の脅威を感じさせられました。死傷者もあり、関西国際空港連絡橋が破損するなどの被害はありましたが、全体的には過去の災害から積み重ねてきたハード、ソフトの対策が機能しました。地震では、橋梁関係でこれまでに耐震対策を進めていたことから致命的な被害はありませんでしたが、土木構造物では下水管の破損による陥没事例が1件ありました。また設備関係では、下水処理場やモノレールで損傷がありました。
 7月豪雨では、豊能地区で大阪府の観測で700ミリという記録的な雨量が観測され、河川堤防や道路の一部が損傷を受けましたが、幸いに人的被害は防ぐことができました。寝屋川流域では200ミリ超の雨量があり、地下調節池の中には、降雨が小康状態になったときに排水するという運用により、貯水量が170%に達したところもありました。ただ、雨量がそれ以上になっていれば溢水していた可能性もあり、引き続き事前防災を進める必要があります。
 台風21号では、三大水門はじめ鉄扉などを適切に操作したことにより、市街地の浸水被害を防ぐことができました。特に、第2室戸台風では中之島地域など大阪市内が浸水しましたが、今回はそれら防御施設が機能したことで被害を免れることができました。先人が教訓を活かして整備した施設を、これまでに適切に維持管理を行い、水防団の方々や府の職員が訓練を重ねてきたことの成果だと思っています。
 このほか、倒木や電柱の倒壊も多くありました。倒木は全て同じ方向で倒れており、いかに風が強かったかがわかります。今後は、その処理と復旧に全力を挙げて取り組んでいくことが急務となっています。

■これまで整備してきたインフラ効果が証明された。

 インフラ整備の重要性を改めて感じる機会にはなりました。一定の被害はありましたが、守られた部分も大きかった。今回の災害では得るところも多かったですが、多くの反省点もありました。特にハードだけでなくソフトも含め事前防災の必要性を痛感しました。
 寝屋川流域ではタイムラインを運用しており、流域市では早い段階から避難所を開設し、避難勧告や指示を出していました。これを地域レベルに広げていくことも必要だと思います。主体は市町村ですが、府としてもしっかりと支援していきます。

■来年度事業に関しては。

 災害箇所の本格復旧や防災対策の取組みを継続していきますが、国が3ヶ年の緊急対策として補正予算を組んでおり、これを活用して事業を実施します。そのほか、北部地下河川の下流部の工事や三大水門の老朽化対策の準備等にかかりたいと考えており、橋梁の耐震対策や堤防の液状化対策等も引き続き進めていきます。橋梁の耐震対策は2020年度末までに完了させる予定です。
 鉄道関係では、阪神電鉄なんば線淀川橋梁の嵩上げ工事に着手しました。高潮対策としてだけでなく、水門を閉鎖した場合、毛馬排水機場から淀川へ排水しますが、そのためにも淀川の流下をスムーズにする必要があり、淀川橋梁の橋脚数を減らすためのものです。
 モノレール延伸事業については、今年度末には都市計画決定を行い、来年度には、工事施行認可と事業認可の手続きを進めます。このほか、おおさか東線が3月16日に開業し、なにわ筋線についても手続きを進めていきます。また、道路関係では、大和川線の躯体工事が完成し、今年度中に阪神高速会社へ引き渡し、仕上げ工事を行い来年度末の供用開始を目指します。淀川左岸線や新名神高速道路も着実に進めていきます。

■継続事業が中心になりますね。

 維持管理に関しては、インフラマネジメントで、データベースの本格運用を開始します。収集したデータを基に適切な維持管理を行っていきます。実施にあたっては、新たに開発された技術や工法を活用するとともに、今回の災害での被災を契機に、点検でもドローン等を採用していきます。
 来年度は事業量の増大が見込まれ、我々に限らず業界側でも労務や資機材の確保が課題となる中で、働き方改革に取り組むにはICT施工の活用が必要だと思います。特に、万博に向けて各種の事業が始まると同時に、災害対策を進めていく上でも考えていかなければなりません。

■ありがとうございました。



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