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大阪府住宅まちづくり部 山下久佳部長  【平成31年01月28日掲載】

災害対策加速化に期待

GD大阪 見えてきた将来の姿

日本一のバリアフリー都市へ


 昨年を振り返り、大阪府住宅まちづくり部の山下久佳部長は、大阪北部地震や台風等に対する復旧や被災者支援など「災害対応に追われた年だった」としながら、その一方では、従来からの取組みであるグランドデザイン・大阪に掲げた魅力あるまちづくりの実現に、「大きく動き出した年でもあった」とする。今後もこの流れを継続したいとする山下部長に、来年度の事業をはじめ今後の取組みについて聞いた。

■まずは昨年の動きから。

 昨年は、6月の大阪北部地震はじめ、豪雨や台風等の大きな自然災害が発生したことから、この対応が急務となりました。地震発災当初の動きでは、まず6月19日から10日間にわたり9361件の被災建築物応急危険度判定を実施しました。実施にあたっては兵庫県や鳥取県をはじめとする自治体、災害協定に基づく業界団体から応急危険度判定士の応援を受けました。
 今回の地震では、家屋の全壊は少なかったものの、一部損壊が5万棟以上にのぼりました。ただ、一部損壊については国の災害救助法対象ではなく補助が受けられないため、知事の指示をうけ、「大阪版被災住宅無利子融資制度」や「大阪版みなし仮設住宅制度」を創設しました。無利子融資については、利子を府が負担する形で特例として実施することができ、これまでに1000件近くで活用されています。
 無利子融資は、熊本地震でも3年間で県が利子補給する形で実施していますが、大阪ではそれを一気に実施したことになります。住宅金融支援機構でも、自治体との連携による弾力的な運用を模索していたことから、今回のケースは成功例として評価されています。ただ、補修工事に人手が不足しており順番待ちの方も多くいることから、来年度も延長して受け付けることとして、予算要求も行っています。

■ブロック塀の倒壊が大きな問題となりました。

 ブロック塀については、公共、民間それぞれ点検を進めるとともに、民間の危険なブロック塀を除却するための補助金制度を市町村とともに進めており、来年度からは全市町村で実施することになりました。
 密集市街地では地震による火災はありませんでしたが、危険であることは変わりません。密集市街地整備に関しては、平成32年度の解消を目標に、今年度は予算18億円を計上して取組みを進めており、さらに国の補正予算も活用する予定です。来年度予算でも増額を要求しており、倍額を確保したいと考えています。今回の地震によりその必要性がより強く感じられ、事業を進めるチャンスでもあると思っています。
 また、防災街区整備地区計画の区域内の老朽建築物についても積極的に除却を進めていきます。除却すればその跡地に準耐火建築物が整備されることから不燃性が高まります。ただ、更地のままでは固定資産税が高くなりますから、緑地として活用して減税することも計画しています。全体では、昨年大阪市域分で268ヘクタールが解消され、2248ヘクタールから1980ヘクタールまでに減少しました。
 建物の耐震化では、広域緊急交通路沿道建築物と、大規模建築物については、平成37年を目途に耐震性の不足するものを概ね解消することをめざします。これら安全と安心に関する施策では、予算も確保でき、各市町村でも意識が高まってきており、今後も一気に進んでいくのではと期待しています。

■都市の活力や魅力向上への取組みでは。

 グランドデザイン大阪の策定から7年が経過し、今年度はうめきた2期の開発も決まり、御堂筋も万博が開催される2025年までに側道が歩行者空間化される予定です。さらに、なんば・天王寺・あべの、大阪城周辺、中之島周辺、夢洲・咲洲のグランドデザイン大阪が掲げる各エリアの取組みが進んできました。また、鉄道アクセスについては、なにわ筋線や中央線のほか、JR・阪急・京阪も検討が進められるなど、都心部ではグランドデザイン大阪が描いていた骨格が実現しつつあります。
 次は、新大阪駅周辺です。昨年12月の副首都本部会議で、知事と市長から検討協議会立ち上げに関する了承を得たことから、国や経済界も含めて協議を開始します。まずは来年度中に大まかなまちづくりの方向性をまとめていきます。
 リニア線が開通すれば東京大阪間が一時間で結ばれますが、駅から都心部まで渋滞があれば40分近くかかってしまうような状況では話になりません。駅に直結するような高速道路の整備や新御堂筋のリニューアルも必要で、そういったスケール感を持って取り組みたい。それにより新大阪駅から京都と日本海側、さらに和歌山側へとどこにでも行けるようになればと考えています。

■なるほど。

 グランドデザイン・大阪都市圏の取組みも進めています。淀川の舟運事業に関しては、天満橋八軒家から枚方までの定期航路が就航したことから、近畿地方整備局は京都・宇治まで伸ばすための浚渫を行いながら、民間による小型船で実験を予定しています。また、万博の開催決定により、淀川からベイエリアを結ぶ計画も本格化してきます。昨年度には十三大橋からUSJまで調査を行い、可能であるとの結果が出ており、2025年までには十分に間に合うことから、府としても協力していきたいと思っています。
 さらに万博を契機に、誰もが何処からでもアクセスできるよう、大阪を日本一のバリアフリー都市にしたいと思っています。福祉のまちづくり条例を策定した当時は、大阪が最先端でしたが、その後各種の法律ができたことで時代に合わない部分もあります。特に現在では多くのホテルが建設されていますが、一般客室においては車いすで利用できないところも多く見受けられ、また、鉄道駅でも車いすの移動ルートが整備されていない駅もあります。法律では客室の一定の割合で車いす利用者用客室の整備が義務付けられていますが、府としては一般客室のバリアフリー化の方向で議論を進めていきます。

■担い手確保については

 一昨年、国で「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」いわゆる建設職人基本法が制定されたことから、この大阪府計画を作成します。現在、関係行政機関や建設業者団体等と意見交換を行いながら、どの様に取組みを進めていくべきか議論しております。その中で、特に若年層の不足が顕著であり、将来の担い手不足が危機的状況にあることが分かりました。このため、建設業への入職を促進するための処遇改善はもとより、将来の独立を含めて夢が自己実現できる職種であることをPRすることに努めていきます。

■ありがとうございました。



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