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大阪府・市IR推進局 中村昌也次長  【平成31年01月07日掲載】

万博開催 夢洲のまちづくりに弾み

「世界最高水準の成長型IR」実現へ


 大阪夢洲への統合型リゾート(IR)の誘致に向け、「世界最高水準の成長型IR」を目指し取組みを進める大阪府・大阪市IR推進局では、府市の関係部局やIR推進会議と連携しながら、「大阪IR基本構想(案)・中間骨子」に基づき、ギャンブル等依存症対策をはじめ、誘致にあたっての府民や地域、企業等の合意形成に係る取組みを進めている。全国に3カ所設置されるが、万博開催を追い風に、取組みを加速させる同局の中村昌也次長に、今後の見通しを聞いた。

 府民の理解促進に力注ぐ

 セミナーなど丁寧に情報発信

■まず初めに、IRを誘致することになった経緯からお聞かせ下さい。

 IRは、橋下前知事時代に検討が開始され、松井知事になってからの2013年12月にIR推進法案が上程されたことを受け、大阪市と府市連携によるIR立地準備会議が設立され、その中で夢洲に誘致することが決まりした。夢洲ではかつて2008年のオリンピック誘致を目指して整備が進められてきましたが、誘致がかなわなかったことから、大阪市では開発方針を転換して、産業や物流拠点としての開発を進めてきました。
 その後、2014年の府市IR立地準備会議において、「統合型リゾート立地に向けた基本コンセプト案」が提示され、その中で立地場所として夢洲を軸としたベイエリアに誘致することが確認されたことを受け、府市共同で誘致に向けた検討を進めてきました。

■府市共同体制としたことは。

 府市共同の取組みとなったのには、いくつかの理由があります。誘致にあたって、府民・市民にギャンブル等依存症を懸念する声が多く、その対策に取り組む必要があり、また、IRそのものに対する理解を得る必要性がありました。IRイコールカジノのイメージが根強くありますが、決してそうではないことを理解していただかなければなりません。そのためにはしっかりとした組織を構築して、取組みを進めることが重要でした。
 また、組織を作ることによってIRに対する府市の取組み姿勢を対外的に示していく意味もあります。さらにIRに特化した組織を作ることによって迅速かつ効率的に業務を進めることができます。このため、2016年のIR推進法の成立を踏まえ、2017年4月にIR推進局が設置されました。

■推進局とは別に、IR推進会議がありますが、こちらの役割はどのように。

 IR推進会議では、大阪観光局の溝畑宏理事長を座長に、様々な分野の専門家をメンバーに2017年3月に第1回の会議が開かれました。現在まで9回開催されていますが、同会議の事務局をIR推進局が務めています。会議では、大阪IRの基本コンセプトや目指す姿、立地にあたっての課題抽出とその対策、府民理解の進め方、制度設計を行う上で国に対してどのような制度を要望していくかなど、幅広い議論と意見をいただいています。その議論を踏まえ、2017年8月に府市として「大阪IR基本構想(案)・中間骨子」をとりまとめました。

■なるほど。

 今後は、国においてIR整備法が成立したことを受け、関連する法令等の整備が行われることとなり、我々もそれに基づき事業者の公募条件をはじめ、各種の詳細な手続きを進めていくことになります。作業にあたっては国の動向を見ながら、中間骨子に掲げている「世界最高水準の成長型IR」の実現を目指して取組みを進めていきます。

■誘致に向けた今後の取組みとしては。

 誘致にあたっては府民のコンセンサスを得ることが重要と考えています。このため丁寧に情報発信しながら、府民の皆さんに対し理解促進を図っていきます。具体的な取組みでは、府民を対象とした専門家による理解促進セミナーの開催や、地元企業向けにIR誘致による経済効果等をPRするビジネスセミナーも開催しております。
 また、若い世代に対しては、大学ゼミと連携し、大学生によるIRの研究も実施しています。今後、ギャンブル等依存症対策基本法に基づいて国から対策等が示されてくることから、我々としてはそれらも踏まえながら関係部局と連携して取組みを進めていきます。また基本構想についても、今後、推進会議でも議論を深めていただきながら、しかるべき時期に成案としてまとめていきます。

■昨年には和歌山県がIR基本計画を策定するなど、各地で誘致に向けた動きが見られますが、それら他県の動向については、どうお考えですか。

 9月に国からの誘致に関する意向調査がありました。最終的には全国で3カ所に立地されることから、誘致に手を挙げている自治体とは、互いに切磋琢磨しながら競って行くことになります。勿論、他都市の動向も注視はしておりますが、大阪としては世界最高水準の成長型IRを目指して着実に取組みを進めていきます。

 カジノだけではなく ビジネスの交流拠点

■誘致に向けた取組みを進める中で、何か手応えは感じますか。

 特に依存症に関しては、これから社会へ出る、あるいはギャンブルが可能となる一歩手前の年齢ということで、高校3年生を対象にリーフレットを配布したほか、学校へ出向いて専門家による依存症予防に関する授業等を実施しています。府民向けセミナーでは、参加者へのアンケートも行っており、その結果によると、IRがカジノだけではないことや府市のギャンブル等依存症対策について理解できたという声が九割以上あり、徐々にではありますが、IRについて理解が進んでいると思っています。
 IRに関しては、現在でもカジノというイメージを持つ方が多くおられますが、IRには世界水準のMICEがあり、ビジネスの交流拠点として経済効果を生み出し、雇用創出にも貢献するとともに、IR事業者からの納付金が地域の振興にも寄与するといったメリットもあり、そういった部分をアピールしていきたいと考えています。

■確かに海外のIRではカジノだけでなく、コンサートやプロスポーツの興業も行われています。

 IR推進会議のメンバーには、関西経済連合会や同友会、大阪商工会議所の代表の方々も加わっていただいており、また、10月には大阪商工会議所と共催でビジネスセミナーを開催したところ、定員を超える応募があるなど、地元企業の方々には、かなり興味を持っていただいています。

■ところで、夢洲のまちづくりとの関連はどのように。

 夢洲のまちづくりに関しては、夢洲まちづくり構想の中で、1期から3期に分け、計画的なまちづくりに取り組むこととされています。IR誘致はその1期計画に位置付けられ、IRを端緒にして2期、3期とまちづくりを進めていく方向性が打ち出されています。
 また、開発にあたっては、人工島というメリットを活かし、既成市街地では実現できない24時間稼働可能なまちづくりができます。交通アクセスに関しても、関西国際空港からも近く、鉄道アクセスも夢咲トンネルから延伸できます。万博が決定したことにより、夢州のまちづくりが動き出しました。

■その万博、大阪開催が決定しましたが、これはIR誘致に向けても大きく影響するのではと思います。

 万博は2025年に開催されることから、前年の2024年度中にIRが開業することで、万博との相乗効果を生み出します。万博が決定したことは誘致に向けての大きな追い風になると期待しています。
 夢洲には、国際観光拠点とする位置付けがあり、IRも観光施設とのイメージが強いですが、先程も言いましたが、世界水準のMICEを整備することで、ビジネスを目的とした海外からの多くの企業や人達を呼び込む、ビジネスの交流拠点となり、経済的にもメリットがあることを、より多くの人に理解してもらうことも必要です。世界水準のエンターテイメント拠点でもあり、海外からの投資を呼び込む経済交流拠点でもあります。
 さらに、大阪・関西は、ライフサイエンスや新エネルギーの分野に関しての強みがあることから、それら上手くピーアールしていくことで、海外企業とのマッチング等により新しいビジネスを生み出していくこともできます。誘致にあたっては、他都市と競合することになりますが、我々としては、そのトップランナーであるとの自負はあります。

■誘致に向け今後もご尽力下さい。ありがとうございました。

 
 
 
 


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