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interview
大阪市港湾局 川本清局長  【平成21年12月21日掲載】

臨海部に機能集積

港湾施設とまちづくり

来年度事業 防災・環境改善に重点

業界のさらなる工法・技術開発を


「阪神港」としてスーパー中枢港湾を形成する大阪港では、高規格ターミナルや臨港道路としてのトンネルなど、国際競争力の強化を目指したインフラ整備が行われる一方で、臨海部に集積する機能を生かしたまちづくりを目指して各種の施策が推進されている。その中心的な役割を担う大阪市港湾局では、港湾機能の拡充とともに夢洲・咲洲の活性化に向けた取り組みに努めているが、それら事業の展開や今後の見通しについて川本清局長に聞いた。(渡辺真也)

−−まずは今年度の事業について伺います。

川本局長

今年度の事業ではスーパー中枢港湾関連事業で十月には夢洲コンテナターミナルの三バース一体運用開始と、それに先立って夢咲トンネルを八月に開通させるという大きな目標があり、いずれも予定通りに目標が達成されました。さらにフェニックス事業での大阪沖処分場も十月からの受け入れ開始を予定しておりましたが、これも当初予定通りに整備を完成することができました。

−−各事業とも目標をクリアしたわけですね

川本局長

ええ、ただ全ての工事が終わった訳ではなく、夢洲ターミナルについてはガントリークレーンや荷役ゲートの整備などが残っており、夢咲トンネルにつきましても換気所築造工事などが残っていますから、これらについては継続して実施してまいります。

−−港湾機能の整備とともにまちづくりへの期待も高まっております。

川本局長

咲洲のまちづくりでは、昨今の経済情勢から景気低迷の影響は受けてはおりますが、定住人口も増えてきております。ただ、来年度以降にはWTCビルに大阪府の部局が一部移転する予定であり、また今年九月には大阪市と大阪府、経済界が一緒になって夢洲・咲洲まちづくり推進協議会が結成されました。この中で、十月には両地区の活性化に向けたまちづくりに関する中間報告がまとめられました。ですから今後は、それに基づいての取り組みを進めてまいります。これらのことからまちづくりに関しては、若干ではありますが明るさが見えてくるのではと期待をしております。

−−まちづくりに関しての具体的な取り組みでは。

川本局長

大枠の骨子はありますが、今後五年間程度の工程表を作成して咲洲の環境整備を進めていきます。咲洲では、特にコンテナ用の大型車両による渋滞の解消が課題となっておりましたが、夢洲コンテナターミナルの供用により、咲洲にあったR岸壁はじめ在来のコンテナ埠頭が夢洲にシフトしたことから、かなりの渋滞緩和が期待できます。

−−なるほど。

川本局長

また国際フェリーやC−8・9バースでのゲート待ち車両による渋滞対策も課題となっておりましたが、こちらも現在では工事を実施しているほか対策を講じております。いずれにしろ今年度は八月のトンネル開通、十月のコンテナターミナル稼動とフェニックスでの受け入れ開始という当初スケジュール通りに進められたことについては満足しております。

−−もう一つの重要事業としては防災機能の強化が上げられます。

川本局長

防潮堤の強化や鉄扉自動開閉化などを着々として進めており、また24時間の監視体制を構築して、災害発生時には2時間以内で締め切るための 訓練なども実施しております。また、これまでは東南海・南海地震など津波を想定した計画が主でしたが、阪神大震災のような直下型地震にも耐えられる耐震強化を 図っております。まだまだ進捗は低いですが、人口密集地域や重要構造物周辺から着手しております。

−−さて、来年度事業の見通しですが、予算にはかなり厳しいものになりそうですね。

川本局長

おっしゃるとおりで、今年度以上に厳しいものになりますね。ただ、これまでは経済振興対策、活性化を目的に高規格ターミナルやトンネルなど、 スーパー中枢港湾に重点的に投資して港湾物流機能の整備に務め一定の成果を見ました。このため予算的には市政改革が行われている中でも、 これまで水準を上回る投資をしておりました。ですから今後は調整段階に入ってきます。その中では安全と安心への課題としての防災対策や環境改善に 重点置こうかと考えております。

−−スーパー中枢港湾関連では核となる施設整備がほぼ終了しましたが、その他の港湾整備は。

川本局長

スーパー中枢港湾関連の整備は平成23年度までに終える予定です。あとは夢洲に移転したR岸壁と C−6とC−7のコンテナ埠頭の跡地活用で、R岸壁はフェリー埠頭に、C−6・7はRORO船など多目的船に対応する バースとして利用する計画です。これらハード面に関しては、これまで整備してきた施設をいかに生かすか、ストックの活用が中心となっていきますね。

−−コスモスクエア地区ですが、これまでの開発状況はどのように。

川本局長

住宅整備により本格入居が始まりました。同地区は平成14年に都市再生緊急整備地域の指定を受け、16年度に土地促進助成制度を創設し、 17年から21年までの5年間で12件の施設が立地しており、これまでに約7ヘクタールが開発されております。

−−コスモスクエア地区の現況では。
川本局長

現在、75%の土地利用が進んでおります。常住人口では約1,200人、従業人口では1万4,000人でこのうち大学生が約600人に上ります。 今後は地区の活性化が課題となっており、その一つとして今年十月から咲洲トンネルで、普通車の通行料金を値下げいたしました。 また、地下鉄コスモスクエア駅から整備されているペデストリアンデッキをWTCビルまで延伸致します。

−−夢洲の開発ですが、スーパー中枢港湾関連の先行整備地区以外の造成はどのように。

川本局長

コンテナターミナルの背後地区の約40ヘクタールにつきましては平成24年度から分譲を開始する予定です。 現在、ベイエリアに集積しつつあるソーラーや電気自動車用のリチウム電池などの新エネルギーや環境技術関連の企業や工場、もちろん、 流通関係も含めてですがそういった企業の誘致活動に務めてまいります。

−−企業誘致に関しては、夢洲・咲洲まちづくり推進協議会で、市と府、経済団体による企業等誘致協働チームが結成されておりますね。

川本局長

ええ、10月に結成され既に11月には夢洲と咲洲の見学会を開催いたしまして35社からの参加がありました。 そういった部分でも誘致活動を活発に進めていきます。ですから夢洲に関しても、来年度から分譲に関する売り出し方法などを検討していく予定です。

−−今後のまちづくりにおいても推進協議会が中心になりますか。

川本局長

議論も必要でしょうがアクションを起こしていくことも大事だと思っております。出来ることには取り組んでいき、 その中で新たな課題が出てくれば見直しをすれば良いわけです。

−−さて、経済不況の中、建設業界はかつてない苦境に立たされておりますが、何かアドバイスがございましたら。

川本局長

日本の建設技術には優れたものがあります。夢咲トンネルの工事でも非常に地盤条件の悪い中で、予定通りに完成させていただきました。 土地は簡単に造成出来るものではなく、夢洲に企業が進出した場合でも、出来るだけ短い期間での施設建設が業界には求められると思います。 今後も、そういったニーズに応えられる技術や工法の開発に努めていただきたいですね。

−−そうですね、今後も事業推進にご尽力下さい。

川本清(かわもと・きよし)局長の略歴 
昭和49年4月大阪市採用、港湾局勤務、同57年4月同管理部庶務課主査、((財)大阪南港環境整備公社)、同60年4月同((財)大阪港開発技術協会)、同61年4月企画振興部計画課主査、平成元年4月同計画課技術係長、同3年4月計画局調整部副参事(関西国際空港梶j、同6年4月港湾局企画振興部技術主幹、同8年4月同管理部参事((社)大阪港振興協会)、同10年4月企画振興部開発課長、同11年4月同部計画課長、同12年4月港湾局副理事((財)大阪港埠頭公社)、同16年4月企画振興部長、同17年4月計画調整部長を経て、同19年4月から現職に。大阪市立大学大学院工学研究科修士課程修了。59歳。


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